2004 Fiscal Year Annual Research Report
放射光光電子顕微鏡による反強磁性を示す基板と強磁性、反強磁性薄膜の界面の研究
Project/Area Number |
15360017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 豊彦 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60202040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 太一 東京大学, 物性研究所, 助手 (80313120)
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Keywords | 光電子顕微鏡(PEEM) / NiO / 反強磁性体 / 磁性薄膜 / 磁区ドメイン観察 / 放射光 / 磁気2色性 / 界面磁性 |
Research Abstract |
今年度は、前年度に引き続き、光電子顕微鏡に設置する温度可変マニピュレータの整備をすすめた。製作したマニピュレータの動作が、やや荒すぎたため、顕微鏡の観察には適さないことがわかり、パルスモータを使って微調駆動が可能なように改造を行った。 実際の研究に関しては、昨年度行った、Cr薄膜をNiOに蒸着した系に関する詳細な検討を行ったり、鉄薄膜をNiOに蒸着したときの磁区ドメイン観察を行ったりした。Crの件に関しては、当初得られた見解の通り、Cr奇数層の領域には正味のスピンモーメントが存在し、それと下地NiOのモーメントの交換相互作用が磁区コントラストの変化を生み出していることがわかった。また、Crの膜は、大きな磁区ドメインを持たないため、Crについてのドメインが観察できないばかりではなく、下地のNiOのドメイン構造を小さく引きちぎっていることがわかった。鉄を蒸着した系に関しては、膜厚の薄いところでは、Crの場合と同様、下地との交換相互作用により、鉄のドメイン自身、NiOの反強磁性磁区ドメインを反映したものなるのに対し、厚い領域では、鉄自身がドメインを形成しようとするエネルギーと、交換相互作用との競合関係によって複雑なドメインが現れることがわかった。また、これまでに観測されてきた、NiのL吸収端における磁気2色性ばかりでなく、酸素のK吸収端においても磁区ドメイン観測が可能なことに関しても上述の実験結果から詳細な知見を得ることができた。即ち、酸素のK吸収端では、結晶の反強磁性歪に由来するT-domainが観測されているのに対し、NiのL吸収端では、スピン容易化軸に由来するS-domainとT-domainの双方が観測されたことである。 今年度はさらに、SPring-8に導入された高分解能光電子顕微鏡装置を用い、NiOや、その上に鉄を蒸着したサンプルに関し、高精度実験を行った。つくばの放射光施設では、蒸着の影響を詳細に検討することで、T-domainとS-domainの区別がついていたものが、蒸着しない状況でも詳細なコントラストを得ることができた。しかも、12個存在するドメインのうち、7種を確定したほか、磁壁の様子も観測できた。さらに、これまでに信じられてきたX線吸収スペクトルの形状よりも微細な形状を見出すことにも成功した。 これらの結果は、裏面に記したいくつかの論文で報告したほか、数報の論文を準備中である。又、4件の国際会議で成果報告を行ったほか(うち2件は招待講演)、国内の会議でも数件の報告を行った(1件は招待講演、来年度も1件の招待講演が予定)。
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Research Products
(7 results)