2004 Fiscal Year Annual Research Report
超音波基板励振によるコーティング膜の残留応力制御法の開発
Project/Area Number |
15360052
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松室 昭仁 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (80173889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澤 健二 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (60324448)
高橋 裕 三重大学, 工学部, 助教授 (10216765)
小竹 茂夫 三重大学, 工学部, 助教授 (40242929)
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Keywords | 薄膜 / 残留応力制御 / 基板励振法 / システム開発 / 機構の解明 / 密着性 / 機械的性質 / C-N薄膜 |
Research Abstract |
本研究は基板励振による薄膜の残留応力を圧縮側から引張側へ連続的に制御できる方法を発案し,その有効性を検討したものである.また,本研究は作製した基板励振システムを用いて,励振条件,残留応力制御のメカニズムおよび残留応力制御による機械的性質の変化について明らかにした.以下に検討した内容及び結論を述べる. ・励振条件は振動数よりも振幅に依存して残留応力が大きく変化した.また,結晶性の薄膜についてのみ残留応力制御可能であった.膜厚,基板の結晶性には依存性が見られなかった. ・基板励振による振幅を増加させることで,薄膜の結晶粒が微細化し,さらに,柱状構造の間の空隙が増加した.結晶粒の微細化により,結晶粒に働く表面エネルギーが増加し,これを抑えるために結晶粒同士が合体するための力が働く.また,柱状構造間の空隙の増加により柱状組織間の収縮が起こる.これらの二つの効果により,圧縮側の残留応力が引張側へと連続的に制御できることが明らかになった. ・残留応力に対する硬さ・弾性係数は低下した.残留応力1GPa当たり硬さがいずれの膜も0.5GPa,弾性係数はTiN薄膜では約8GPa, Ti薄膜では約20GPaであった.摩擦係数は残留応力によらず一定値0.3であった.摩耗特性は硬さと同様に,残留応力が圧縮側から引張側へ変化すると摩耗量は増加した.圧縮側,引張側ともに残留応力の値が小さい薄膜の剥離に対する耐久性は高かった.破壊特性は残留応力の変化に伴い亀裂間隔,TiN薄膜では亀裂の長さが変化した.亀裂間隔は密着性に起因し,亀裂の長さは残留応力制御に伴う結晶の配向性の変化により,破壊特性が脆性的から延性的に変化したことに起因する. ・基板励振により残留応力制御された薄膜の応用の一例として,トライボロジ特性に優れるC-N薄膜の中間層に応用したときの破壊特性について検討した.基板励振により残留応力を制御した薄膜を中間層に用いた薄膜において,TiN薄膜の破壊形態に関わらずC-N薄膜は破壊が発生しなかった.また,中間層の残留応力制御を行うことで密着性を向上させることができた.
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