Research Abstract |
レンダリング・ハードウェアを用いた製造支援アプリケーションを作成し,この技術の実用性と有用性を評価した.処理速度が問題となっている製造アプリケーションを知るために,自動車業界を中心にインタビュー調査をおこなった.その結果,以下の3種類のアプリケーション開発を行うことになった.(1)金型加工の工程設計支援に有効な前加工の削り残り領域の抽出,(2)セルオートマトンを用いた大規模な構造解析,(3)自動車ボディのデザインで用いられるリフレクション評価.これらの問題では,いずれも百万を超える要素数の図形を扱うため,従来手法では処理に多大な時間を要し問題となっていた.(1)の処理は,逆オフセット計算と加工シミュレーションを繰り返し行うことで実現できる.これらの計算は,レンダリング・ハードウェアを用いることで高速処理可能なので,従来数時間を要していた削り残り領域の抽出処理を,わずか数分で行うことができる.格子状に配置されたセルの値を,その隣接のセルの値に基づいて決める処理を繰り返すことで,大規模な構造解析を実現する(2)の手法は,セルを画面のフレームバッファに置き換え,セルの値をピクセルの色情報で表現すると,GPUに備えられているシェーダー機能を用いることで高速処理できる.実際にプログラムを実装しその有効性を検証した.(3)自動車ボディの品質評価手法としてよく用いられているリフレクション評価は,厳密に行うためには多大な時間を要するため,実務ではテクスチャ・マッピングに基づく簡易手法で代替することが多い.GPUのシェーダー機能を用いることで,このリフレクション評価を正確かつ高速に実現できる.これらのプログラムを実装し,その速度や精度を評価・検討することで,レンダリング.ハードウェアを用いた製造支援プログラムは十分に実用的であることが確認できた.
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