2003 Fiscal Year Annual Research Report
凍結保存に関わる浸透圧ストレスによる細胞損傷とマイクロスケール物質移動
Project/Area Number |
15360116
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
石黒 博 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (30176177)
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Keywords | 細胞 / 電解質水溶液 / 溶液効果 / 暴露濃度 / 暴露時間 / 生存率 / 細胞損傷 / モデル化 |
Research Abstract |
凍結は、細胞や組織などの生体に対して破壊効果と保存効果を持ち、前者は医療分野で凍結治療(手術)に利用され、後者は、医療、農林、畜産、食品などの広い分野で凍結保存に利用される。 生体の凍結利用のプロセスは、大別して1)凍結前処理過程、2)凍結過程、3)保存過程(最低到達温度)、4)融解過程、5)融解後処理過程の5つのプロセスから成る。これらの過程において、種々の損傷原因の可能性があり、凍結・融解後の生存性は当該過程のマクロ操作条件に依存する。 本研究では、細胞の凍結に関連した生体の熱・物質移動の問題として、未凍結水溶液の濃縮による電解質濃度の増加(溶液効果)に注目し、細胞の形態応答と損傷特性を調べ、統計的特性を求めた。これらの特性に対する電解質濃度と暴露時間の影響を詳細に明らかにした。さらに、実験結果に基づいて、細胞の損傷・死滅の反応速度論的モデル化を行った。具体的には、以下のようである。 電解質(NaCl)水溶液の灌流により、細胞(ヒト由来前立腺ガン細胞株PC-3)まわりの浸透圧条件(等張→高張(NaCl濃度Cm、暴露時間τ)→等張)を設定し、パラメータの条件として、Cmを1.8〜4.0Mの4通り、τを2〜60minの9通り、計28通りとした(温度は25℃)。これらの実験条件に対して、高濃度NaCl水溶液に対する暴露前後の細胞の形態(大きさ)を顕微鏡画像取得装置により計測・記録すると共に、浸透圧ストレス経験後、等張状態でトリパンブルーによる細胞膜の色素排斥能の評価により細胞の生死判別を行った。細胞の形態特性として暴露前後の細胞の大きさの頻度分布、相関性などを、細胞の損傷特性として細胞の生存率、死滅の確率分布関数・確率密度関数、細胞の大きさと生死の相関性などの各種統計的特性を明らかにした。細胞の損傷・死滅が、同様の機序で相似的に、時間発展を伴い反応速度論的に進行することが示唆された。さらに、この実験結果に基づいた、細胞損傷・死滅の反応速度論的モデル化を行い、モデル定数を決定した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 石黒 博, 他2名: "電解質水溶液の高浸透圧ストレスに対する細胞の応答と損傷特性"第41回日本電熱シンポジウム講演論文集. (発表予定). (2004)
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[Publications] 石黒 博, 他2名: "溶液効果による細胞損傷・死滅の反応速度論的モデル化"日本機械学会熱工学カンファレンス2004講演論文集. (発表予定). (2004)
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[Publications] 石黒 博, 他2名: "溶液効果による細胞の損傷特性と反応速度論的モデル化"日本機械学会第17回バイオエンジニアリング講演会講演論文集. (発表予定). (2005)
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[Publications] 石黒 博: "生体の凍結と要素現象"第41回日本電熱シンポジウム講演論文集. (発表予定). (2004)