Research Abstract |
本研究では,多人数によって利用されるオフィス空間や学校の教室などを対象とした,省エネルギー型の温熱環境設計を支援するため,温熱快適性に対する人の代謝量変化および体温調節行動の影響を正当に評価するための手法を開発する。また,知的生産性の観点から,人の体温調節行動に期待した省エネルギー型温熱環境について,従来の基準に沿った温熱環境との差を明らかにする。 本研究は,平成15年度から平成17年度までの3年間の継続研究であり,初年度である本年度の研究実績は以下の通りである。 1)オフィスや教室などにおける温熱的非定常性・体温調節行動・温熱快適性の実態把握 ・本実測の目的は,オフィスや教室などで実際に在室者が経験する温熱的な非定常性(温度や代謝量などの変化)と,それに伴う在室者の体温調節行動について,室内温湿度・風速等の実測調査並びに温熱快適性に関するアンケート調査を行うことによって把握し,基礎的なデータの蓄積を行うことである。 ・オフィスビルとして,仙台市内の建物2件と茨城県つくば市の建物1件を対象とし,2003年7月〜2003年11月の各月において,室内温湿度の長期実測とインターネットを用いたアンケート調査を1〜2週間ずつ実施した。また,夏季,秋季,冬季においては,移動計測カートによる室内温湿度・風速分布の詳細測定を実施した。 ・教室として,東北大学工学部の講義棟1件と横浜国立大学工学部の講義棟1件を対象とし,2003年の夏季(7月)と秋季(10月,11月)の両季節において6同ずつ,実際の講義時間中に調査を実施した。 ・その結果,用途,性能,在室者による操作性,着衣条件などに起因する温熱適応性の違いが認められ,着衣量の季節変化や快適範囲の広さに影響を及ぼしていることが明らかになった。また,同じ建物においても,季節によって快適範囲の広さが変化することも明らかになった。 2)代謝量変化が温熱快適性に及ぼす影響に関する被験者実験 ・本実験の目的は,温熱快適性に対して,代謝量増加による影響がどれだけ早くどの程度現れるか,また,代謝量回復後にどれだけ長くどの程度残るかを明らかにすることである。 ・大学生または大学院生男女各5人の計10人を対象として,横浜国立大学エテコクノロジー・システム・ラボラトリー内の人工気象室にて代謝量変化の影響に関する被験者実験を行った。 ・その結果,代謝量のstep-change後の温熱感覚は,step-change後8分以内に50%以上の変化が現れ,30分以内に95%以上の変化が現れることが推定された。
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