Research Abstract |
本年度は,この課題研究の最終年である.そこで,平成11年〜14年に実施した特定領域研究(B)での成果である高純度マグネシウム被覆の研究と組合わせて,マグネシウム合金の耐食性改善のための一つのまとめとした. まず,通常の手法により腐食・酸化させたAZ31B合金について,SPring-8の兵庫県有ビームライン(BL-24XU)において回折測定を行った.その結果,酸化マグネシウムの回折ピーク以外に,いくつかの不明ピークがあることがわかった.従来からの研究により,酸化マグネシウム被覆を行った試料の塩水浸漬試験をレーザー顕微鏡観察下で行うと,介在物を起点として気泡の発生が開始することが判明していた.この介在物の回折ピークが検出されたものと考えられる.そこで,高純度マグネシウム被覆を行った試料について,さらに腐食・酸化処理を施した.上記同様に塩水浸漬試験を行った結果,蒸着膜無しで酸化マグネシウム被覆を行った試料では,浸漬開始後900sで気泡が発生したのに対して,蒸着処理後に酸化マグネシウム被覆を施したものでは,気泡発生までに1200sを要した.また,腐食の最終的な形態である糸状腐食については,蒸着無しで酸化マグネシウム被覆を行った場合には43.2ksですでに発生したいたが,同じ時間の浸漬後,蒸着+酸化マグネシウム材では孤立した気泡のみが認められ,糸状腐食は発生しなかった.これら結果は,基板として用いたAZ31Bに含まれる介在物表面では有効な酸化反応が抑制されること,およびこの対策として,高純度マグネシウム被覆が有効であることを示すものである. 同様に,フッ化処理をほどこして表面にマグネシウムのフッ化物層を形成させる処理についても,高純度マグネシウムを適用した.まず,SPring-8において,回折測定を行ったところ,フッ化物としては,MgF_2およびNaMgF_3が形成されていることを明らかにした.前者はレンズのコーティングに用いられる化合物であり,後者は地球のマントルを構成する化合物である.ともに化学的に安定である.AZ31B合金基板に直接これらフッ化物層を形成した試料,および高純度マグネシウム被覆を行った上にフッ化物層を形成した試料について耐食性を評価して比較した.これら試料は非常に耐食性が高いため,塩水浸漬試験では腐食発生までに長時間を要するため,0.1Nの硝酸溶液を用いた浸漬試験を行った.その結果,高純度マグネシウム層無しでフッ化物層を形成した試料においては,1200sで気泡が発生したのに対し,高純度マグネシウム層+フッ化物層の試料では,1800sまで気泡発生は認められなかった.この現象も上記酸化マグネシウム被覆材と同様,不純物を含むフッ化物の形成が抑制されたためである. 以上のように,これまで提案してきた二つの手法を組合わせることにより,耐食性が向上することを明らかにした.
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