2005 Fiscal Year Annual Research Report
花粉散布様式から見た虫媒花植物の繁殖戦略と交配システムの再評価
Project/Area Number |
15370006
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (30221930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
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Keywords | 訪花昆虫 / 花粉散布 / 空間遺伝構造 / 結実成功 / 資源制限 / 高山植物 / 森林植物 / 交配システム |
Research Abstract |
平成15-16年度に行った人工花序を用いた室内実験の結果について、花蜜分布、花序サイズ、花序密度、花色などの諸形質が送粉成功に及ぼす効果について解析を行い、一般化を行った。 高山生態系において、開花時期が自殖率や花粉親多様度に及ぼす影響をキバナシャクナゲ個体群で調べた。季節的な訪花昆虫の行動の違いは、送粉効率や生産種子の遺伝的多様度に大きく影響することが明らかとなった。また、開花の時間的変異が花粉散布パタンに大きく作用し、個体群内に空間遺伝構造を作り出すことをエゾコザクラ個体群で見いだした。 光有効性が季節的に変動する落葉広葉樹林の林床植物群落で、繁殖成功の制限要因を調べた。制限要因は開花フェノロジーと密接な関係があり、春植物は一般に高い結実率を達成しているが、マルハナバチ媒花はハエ媒花植物に比べて、結実率の年変動が大きかった。林床が暗くなる初夏に開花する植物は一般に結実が低く、花粉よりも光資源により結実が制限されていた。林床が暗くなってから開花結実する夏〜秋咲き植物は、一般に結実率が高いが、ハチ媒花植物は花粉制限を受け易かった。このように、光環境に応じた開花フェノロジーグループ毎に、共通の結実特性が認められた。 クローナル植物スズランを対象として、その種子繁殖ならびにクローン成長を通じた繁殖戦略に関わる調査を行った。人工交配実験の結果、同一クローン内の花序間の受粉ではほとんど種子は結実せず、異なるクローン間で種子結実が認められた。また、種子結実率は近隣にある和合花粉を持つ異なるクローンの花数により大きく左右されることも明らかになりた。種子生産にはアブやハチ、甲虫類等の送粉昆虫を介した他家受粉が必要である。従って、クローン成長の程度は、花粉媒介者を誘引する花密度に影響を及ぼし、和合花粉の供給効率、ひいては種子繁殖を通じた個体の繁殖成功に影響を及ぼすことが明らかになった。
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Research Products
(11 results)