Research Abstract |
1.本年度は想定外の事態が生じた.本研究開始以来継続して用いてきた精子希釈液であるIrvine Scientific社のBWW溶液が突然,製造中止となり,そのストックも販売元から無くなった.そのため平成15,16年度のデータに今年度のデータを追加し,最終的なまとめをする研究当初の予定は実現不可能となった. 2.広島大学の前田照夫助教授に家禽の精子希釈液について相談した結果,広島大学で開発した広島希釈液を用いることにした.本希釈液を用い,イワヒバリの精子運動活精子遊泳速度,精子活性率,精子生存期間,精子密度などの基礎的データの分析方法を確立した. 3.Irvine Scientific社のBWW溶液を用いた分析結果と広島希釈液を用いた場合の分析結果は細かな数値で異なり,両者の結果をプールして分析することは不可能であることがわかり,文字通り一からの再出発であることがわかった.また,イワヒバリの平成15,16年度のデータはサンプル数が少なく,分析できないこともわかった.そのため,本研究に関する論文等の執筆は不可能となった. 4.仕方がないので,昨年と同様、乗鞍岳に生息するイワヒバリの2グループの成鳥から精子の採集及びホルモン分析のために血液を採集した.精子の運動活性は広島希釈液を用いて現地で8mmビデオに録画し,血液の一部は簡易遠心分離器を用いて,有形成分と血漿に分離した.血液の一部は父性判定のための資料としてバッファー液に保存した.これらのサンプルは研究分担者にわたし,分析を開始した. 5.野外で8mmビデオに順位行動と性行動を記録することにより,各グループの構成員間の順位,雌の求愛行動がどの雄に向けられていたのか分析した. 6.イワヒバリ精子の研究方法の確立のため行ったウズラの研究では,Irvine Scientific社のBWW溶液を用いている.この研究では,3個体のウズラを1ケージにいれた実験群を28ケージ,1個体だけを1ケージに入れたコントロールを18ケージ用意し,これらの個体を飼育し,実験群で形成された順位と精子遊泳速度,精子活性率,精子密度およびホルモンの関係を調べた結果,高順位個体ほど精子遊泳速度は速く,精子活性率も高く,また,精子密度も高いことがわかった.ホルモンレベルも順位と正の相関が認められた.現在,投稿論文として執筆している.
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