2005 Fiscal Year Annual Research Report
水界生物群集に及ぼすpCO_2のストイキオメトリー効果に関する研究
Project/Area Number |
15370010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (50250163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 修次 山形大学, 理学部, 助教授 (10272056)
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教授 (50238234)
千葉 聡 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (10236812)
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Keywords | 湖沼 / 二酸化炭素 / プランクトン / 集水域 / 溶存有機体炭素 / 生態系 / 炭素収支 / 生物群集 |
Research Abstract |
本研究は、1)集水域の土地利用と湖沼生態系の二酸化炭素分圧(pCO_2)との関係を把握し、2)pCO_2変化に伴う種間相互作用や物質転換効率の変質過程を生態化学量論の視点から明らかにすることで、3)地球・地域環境変化に伴う湖沼生物群集の応答予測を行うことを目的としている。この目的のため、前年度に引き続き湖沼調査を実施し、調査結果を強化するとともにGISを用いて集水域を解析し、湖沼pCO_2への被覆・土地利用の影響を解析した。主成分分析により各湖沼の集水域の被覆・土地利用特性を数量化し、湖沼の物理・化学・生物パラメータとともに共分散構造分析を行ったところ、集水域に針葉樹林が広がる湖沼では溶存有機態炭素の流入が相対的に多く、これを従属栄養生物が直接・間接的に利用して無機化するためpCO_2が増加することがわかった。しかし、集水域に田畑・市街地を多く含む湖沼では、栄養塩流入が相対的に高くなるため一次生産が活発となってCO_2を吸収するため、pCO_2は大気よりも低くなる。すなわち、湖沼の炭素代謝は栄養塩と溶存有機態炭素の流入バランス(化学量)に強く依存し、それらは集水域の被覆・土地利用を反映していることが示唆された。 また、このような湖沼のpCO_2変動に対する生物群集への応答を調べる、CO_2濃度を操作したマイクロコズム実験を実施した。その結果、pCO_2の変化に対する藻類の応答やその藻食プランクトンへの化学量効果は、藻類分類群によって異なることが示された。すなわち、ラン藻類ではpCO_2の変化に応答は小さく、藻食プランクトンの餌としての価値も小さいものであったが、緑藻や珪藻類ではpCO_2の変化に成長速度や化学量が鋭敏に応答し、藻食プランクトンの餌としての価値はpCO_2濃度によって大きく変わることが明らかとなった。湖沼のpCO_2の挙動はこれまで殆ど注目されてこなかったが、集水域の土地利用を指標する一方、湖沼の食物網にも強く栄養を及ぼすものであることが、本研究により示唆された。
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Research Products
(6 results)