2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子解析による雌の子しか残さないマイマイガ性比異常雌の起源と進化に関する研究
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15370014
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Research Institution | TOKYO UNIVERSITY OF PHARMACY AND LIFE SCIENCES |
Principal Investigator |
東浦 康友 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60322492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山形 秀夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20023468)
石原 通雄 兵庫医科大学, 生物学研究室, 助教授 (50068491)
原 秀穂 北海道立林業試験場, 森林保護部, 主任研究員 (40414271)
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Keywords | マイマイガ / ミトコンドリアDNA / 石狩低地帯 / Richard Goldschmidt / 性決定理論 / Male-killing / DMドメイン |
Research Abstract |
北海道美唄市で発見した、卵の孵化率が約50%で子が雌のみの性比異常雌(以下では単性雌と呼ぶ)は本州型のミトコンドリアDNA(mtDNA)であり、性比1:1で子を残す両性雌(北海道型mtDNA)とは約2%も塩基配列が異なっていた。また、細胞内共生細菌の有無をPCRによって調べても存在が確認できなかったことから、マイマイガの単性雌は細胞内共生細菌が原因ではなく、亜種間交雑による生殖隔離の一種であると考えられた。Goldschmidt(1934)の性決定理論にある亜種間交配の追試として、青森の雌(本州型mtDNA)と北海道雄(北海道型mtDNA)のF1雌に北海道雄を戻し交配したところ子はすべて雌ばかりになり単性雌を創出することに成功した。 本州型mtDNAハプロタイプは北海道の西部に分布しており、北海道型mtDNAハプロタイプは東部に分布している。両ハプロタイプは石狩低地帯で接触しており、石狩低地帯では単性雌が高頻度で観察された。2箇所の固定調査地として、札幌市南区小金湯と勇払郡早来町栄町を設置して単性雌の頻度と両ハプロタイプの頻度を調べた。両調査地とも本州型mtDNAハプロタイプの単性雌は約50%であったが、両性雌のハプロタイプは本州型がやや増加していた。 両ハプロタイプの変動予測を計算機シミュレーションによって行ったところ、北海道型が85.1%以下になると10世代ほどで本州型に駆逐されてしまうことがわかった。北海道型がこれ以上でも本州型は単性雌として存続可能であった。この予測は石狩低地帯の状況をよく説明していると考えられる。 雄の子が死んで雌の子ばかりとなる機構を探るため、雌雄差を決定するとされているDM遺伝子に着目し、マイマイガにおける相同遺伝子を単離し、単性雌の胚と両性雌の胚とで発生過程における発現量の解析を行った。
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