2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経系はなぜ束なのか-並列構造の起源に関する実験的検証
Project/Area Number |
15370030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
下澤 楯夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10091464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (20333643)
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80332477)
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Keywords | 熱雑音 / 加算平均 / 並列構造 / 機械感覚細胞 / 情報量計測 / 光計測 / コオロギ |
Research Abstract |
神経系は並列信号処理を行っていると言われている。なぜ神経系は「並列」の信号処理を採用したのか、「高性能な単一」ではなく多数の繊維からなる「束」で信号処理をするのか、単細胞から多細胞への進化の当然の帰結なのか、単細胞でも細胞表面に並んだ複数の受容体による「並列処理」が行われているのか?これらの疑問は、つまるところ、神経系は進化の上での如何なる淘汰圧への適応の産物なのか、またその適応にはいかなる拘束条件が付きまとったのか、を問うことになる。 神経細胞は熱雑音感受性を持っており、そのことが全動物に共通する神経系の並列構造の起源であることを、本研究では実証する目的で行っている。コオロギ尾葉上で近傍にある気流感覚毛でも、そのブラウン運動は互いに無相関であることを確認するため、既設の気流感覚毛ブラウン運動計測装置を2チャンネル化し、隣り合う感覚毛のブラウン運動を同時計測して互いに無相関であることの実証データを集積すること、気流感覚毛のブラウン運動と感覚細胞の膜電位・電流応答との相互相関関数の計測を試みている。また、気流感覚毛のブラウン運動スペクトル解析および気流感覚細胞への薬物の効果の計測のため、薬物を局所的に微量投与するためにピコポンプとその制御に必要な電気刺激装置を設備備品費として購入した。 計測は現在進行中であるが、これまでの成果から、コオロギ気流感覚系では、1.感覚細胞は情報受容にあたってエネルギーを散逸し、揺動散逸定理に従ったブラウン運動を観察できること、2.感覚細胞の膜電位揺らぎはブラウン運動と相関を持つこと、3.神経細胞は熱雑音領域で動作しており、情報伝送素子としての信号対雑音比が極めて低いこと、4.それでも神経細胞からの信号は、介在神経へのシナプス加重によって再構成されること、を実証していく。
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