2004 Fiscal Year Annual Research Report
利得収支を最適化する行為選択過程:鳥類大脳線条体の機能
Project/Area Number |
15370033
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松島 俊也 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40190459)
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Keywords | 脳 / 行動 / 情動 / 認知 / 衝動性 / 意欲 / 線条体 / 辺縁系 |
Research Abstract |
早成性鳥類は、孵化直後から精確な視覚弁別に基づく選択行動を示す。この特性を利用して、意思決定過程、特に利得収支の計算過程について一連の実験的検討を加えた。個体レベルの行動学的解析・局所脳破壊実験などに加え、覚醒自由行動下・課題遂行中における大脳単一ニューロン活動の解析を総合的に行うことにより、以下の知見を得た。 1 基底核:予期される報酬の時間的接近の脳内表現とその働き 遅延時間を繰り込んだ報酬強化色弁別学習課題を、孵化後1-2週齢の雛鳥に学習させた。線条体内側部の破壊によって、空間的に近い報酬を選び取ろうとする衝動的選択へのシフトが見出された。報酬の時空間的な近さ(proximity)に基づく行動選択のみが阻害され、報酬の有無および量に関する行動選択は正常だった。さらに、線条体ニューロンには、予期される報酬の近さを特異的に符号化するものが見出された。餌への到達までに要する時間とコストの計算に関わり、行動の収支を最適化する。 2 扁桃体・前頭前野相同領域:予期される報酬の量とコストの脳内表現と働き 単一ニューロン解析によって、弁別記憶の細胞表現と共に、音に関する一時的作業記憶と考えられる活動を見出した。さらに、この領域の選択的な破壊によって、より大きな処理コストを嫌うcost-averseな行為選択へのシフトが見出された。この領域には予期される報酬の量と、それに伴うコストの情報が表現されているものと考えられる。到達した後の、餌の処理に要する時間の計算に関わり、行動の収支を最適化する。
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