2005 Fiscal Year Annual Research Report
古代DNA分析を導入したエゾシカ集団の系統地理の変遷と多様性成立機構の解明
Project/Area Number |
15370034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 創成科学共同研究機構, 助教授 (80192748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 哲也 北海道大学, 総合博物館, 助教授 (90125279)
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Keywords | エゾシカ / ボトルネック / 系統地理 / 分子系統 / ミトコンドリアDNA / 多様性 / 古代DNA / 考古学 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、縄文時代から現代にいたるまでのエゾシカ集団の系統地理的変遷を明かにし、遺伝的多様性の成立機構を解明することを目的とした。当初の計画にしたがって研究を遂行することができた。考古学標本の古代DNA分析を導入した結果、新たなミトコンドリアDNA(mtDNA)タイプを見出し、縄文および続縄文時代のエゾシカ集団では現代や近世アイヌ文化期のエゾシカに比べて遺伝的多様性が高かったことが示唆された。さらに、過去には現在では発見されていないmtDNAタイプが優占していたこともあることが明らかになった。また、mtDNAタイプ間の塩基置換から現在の阿寒周辺に分布しているタイプが分子系統的に最も祖先型であると考えられた。現在のエゾシカ集団で優占している4つのmtDNAタイプの頻度は時代が古くなるほど低くなり、古代のエゾシカ集団がより多様な遺伝子構成を有していた可能性がある。特に、現在においてもっとも頻度が高いmtDNAタイプは縄文シカにおいては発見されなかった。これらの結果は、縄文時代から現在にいたる間、エゾシカ集団は厳しい自然環境の中で複数回のボトルネックを経験し、ダイナミックな集団サイズの変動や移動を繰り返してきたことを示唆している。 一方、平成15〜16年度に採取された現生エゾシカ標本についてmtDNA分析を行い、先行研究との比較により、過去約10年間の集団構造変動を解析した。道西部と道央部から得られた標本の分析を行った結果、エゾシカ集団の分布拡大が明らかになった。道北部では東部から西部への集団の移動がみられ、日高地方から石狩低地帯周辺では既存集団の増加によって個体数が増加していると考えられた。
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Research Products
(7 results)