2004 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の分布制御におけるERM蛋白質の役割:ノックアウトマウスを用いた解析
Project/Area Number |
15370083
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
月田 早智子 京都大学, 医学部, 教授 (00188517)
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Keywords | 細胞骨格 / 細胞膜 / アクチン / 情報伝達 / 分泌 / エズリン / ERM / 膜融合 |
Research Abstract |
平成15年度の計画で得られたエズリンノックアウトマウスの解析を引き続いて行った結果、エズリンノックアウトマウスはすべてのマウスで生後2、3日後での死亡が確認された。したがって、このマウスにおいて成熟した臓器でのユズリンの機能解析は不可能であるという結論に達した。そこで、エズリンノックダウンマウスの作製を目的として、エズリン遺伝子のイントロンの部分にターゲティングベクターを組み込んだマウスを作製したところ、低い成長率ながら7%の生存率で離乳期を超えて成体に達する個体を得ることができた。このマウスにおいては、すべての臓器でエズリンの発現が4%以下に減少しており、成熟した臓器の機能解析が可能であると思われた。エズリンの発現が特に多い臓器としては、胃や小腸がしられているが、生理学的測定から、胃酸の分泌がユズリンノックダウンマウスで大幅に減少しており、このマウスが無酸症という病態を呈することが観察されたので、本年度は、胃酸分泌に関わるエズリンの機能解析を行った。 胃酸の分泌機構に関しては、胃壁細胞においてHK-ATPaseを保有するtubulovesiclesといわれる構造がアピカルの細胞膜に融合することにより、HK-ATPaseが機能して胃酸を分泌することが知られている。エズリンはアビカルの細胞膜に局在することから、tubulovesiclesとアピカルの細胞膜の融合機構に関わるのではないかと推測されているが、詳細は不明である。今回、エズリンノックダウンマウスでの胃酸分泌障害の結果をふまえ、野生型のマウスとエズリンのノックダウンマウスの胃を取り出し、ヒスタミン刺激による胃酸の分泌実験を行った。取り出した胃をヒスタミン非存在下および存在下においたのち、電子顕微鏡観察を行うと、野生型の胃では、tubulovesiclesとアピカルの細胞膜の融合が起こっていることが明瞭に観察された。これに対し、エズリンノックダウンマウスの胃においては、このような融合を観察することができず、tubulovesiclesが細胞質に残り、アピカルの細胞膜の伸展は全くおこらなかった。 このことから、これまで想定されてきたように、胃酸の分泌はtubulovesiclesとアピカルの細胞膜に融合により行われ、そのような融合によりアピカルの細胞膜が胃壁細胞内部に伸展することがエズリンによって制御されていることが、明らかに示された。
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Research Products
(3 results)