Research Abstract |
都市近郊における里山を介した物質循環にかかわる基礎的な知見を得るために,里山管理時に発生するバイオマス量を推定した.この際,バイオマスの取得と環境保全機能の両立を図るべく,既往研究をもとに環境保全機能の発現を考慮した管理手法を4つ設定し,それぞれについて管理時に発生するバイオマス量を推定した.また,得られた結果をもとに市町村単位でバイオマスの利用に関する評価を行うことによって,里山のバイオマスの潜在的な重要性を定量的に示した. 具体的には,茨城県つくば市中根・金田台地域を対象に現地調査を行い,林分収穫表や既往研究の推定式をもとに管理時の発生量を推定した,結果,管理手法ごとに1.22〜5.22t/haのバイオマスを発生させることが明らかにされた.次に,結果をつくば市全域に外挿し,バイオマスを用いた発電を行うケースを評価した場合,年間約1,300〜5,200世帯分の電力を供給できることが示された.また,既往研究をもとに化石燃料の代替による炭素の削減量を推定した結果,カーボンニュートラルな資源であるバイオマスを利用することによって約1,700〜6,700tの炭素の削減が期待でき,この値は市が設定した削減目標値の25%〜99%を占めるものであった.これらのことから都市近郊の里山は,バイオマスの供給源として重要であることが定量的に示された.今後は環境保全機能の発現を念頭に置きながら,積極的な里山管理を促がしていくことが必要だと考えられた. ただし,里山のバイオマス利用の実現にむけてはコスト面での問題等,多数の障害があると考えられ,解決にむけては里山以外の種地から発生するバイオマスを用いて,バイオマス利用の効率性を高める必要があることを指摘した.
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