2004 Fiscal Year Annual Research Report
植物ウイルスの媒介昆虫-宿主植物間のシャトル感染機構の解明
Project/Area Number |
15380038
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Research Institution | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 |
Principal Investigator |
大村 敏博 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 中央農業総合研究センター・病害防除部, 室長 (20355499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 新哉 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 中央農業総合研究センター・病害防除部, 主任研究官 (60355500)
一木 珠樹 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 中央農業総合研究センター・病害防除部, 主任研究官 (70355501)
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Keywords | イネ萎縮ウイルス / 昆虫系統 / 昆虫媒介 / 宿主特異性 |
Research Abstract |
雌雄ともウイルスを保毒した媒介昆虫を一定条件で飼育して得た昆虫系統を純化し、SDS-PAGEによって泳動度を普通系統のものと比較したところ、構造タンパク質に違いはなかったが、核酸では分節ゲノムS6において明瞭な差異が認められた。昆虫系統のS6の塩基配列を解析、普通系統のものと比較したところ、アミノ酸配列で3箇所に違いが認められた。これは3クローンにおいて一致していた。本結果から昆虫系統は固定された系統であると考えられた。 ウイルス感染した植物を温室内で維持、生長後に切り返し、これをくり返して植物のみで維持し、昆虫による媒介性を喪失した非伝搬系統の内殻粒子と伝搬株の外殻タンパク質を組み合わせてウイルス粒子を再構築した試料は昆虫細胞への感染性を回復した。ところが、上記試料を接種した細胞からのウイルスの回収は同様な濃度の伝搬株のウイルスを接種した場合に比べて極端に少なかった。そこでウイルスを接種した後、経時的に検定したところ、再構築粒子は最初の感染細胞に止まり、隣接細胞へ感染できないことが判明した。一方、伝搬株を接種した場合には日時の経過と共に隣接細胞が感染していった。次に、再構築粒子を昆虫に注射し、イネへの伝搬性を調べた結果、伝搬株を接種した対象区と異なり、非伝搬株の再構築粒子は昆虫で増殖できず、イネへ伝搬されなかった。これは感染に必要なP2タンパク質をコードする非伝搬株のRNAにポイントミューテーションがあり(都丸ら、1997)、感染に必要なP2タンパク質を自ら生産できないため最初の感染は伝搬株のP2タンパク質の手助けによって起きたものの、隣接細胞への二次感染ができず、昆虫体内で十分にウイルスが増殖できないため、植物への伝搬ができなくなったものと考えられた。これらの結果からP2タンパク質は媒介昆虫の細胞への一次及び二次感染に不可欠な因子であり、P2タンパク質の欠損によって本ウイルスが非伝搬となることが確認された。
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Research Products
(2 results)