2006 Fiscal Year Annual Research Report
侵入地と原産地個体群の比較による侵入昆虫の分布拡大におよぼす生物群集の影響
Project/Area Number |
15380039
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
安田 弘法 山形大学, 農学部, 教授 (70202364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻谷 保之 近畿大学, 農学部, 教授 (80153964)
中村 寛志 信州大学, 農学部, 教授 (70123768)
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Keywords | 生物群集 / 外来種 / 分布拡大 / 種間相互作用 / テントウムシ |
Research Abstract |
1)外来インゲンテントウの寄生蜂による寄生率の解明 本年度は,長野県内における侵入害虫インゲンテントウの分布拡大調査と2種の土着寄生蜂との相互関係に関するとりまとめを行った。インゲンテントウは、諏訪湖周辺から和田峠を越えて丸子・上田市に分布域を拡大していた。2種の土着寄生蜂Nothoserphus afissae, Pediobius foveolatusに関する調査データのとりまとめの結果、P.foveolatusはインゲンテントウの第2世代幼虫に高い寄生率を示し、侵入害虫に対して効果的に密度抑制機構として働き、分布拡大を抑制する高い効果があることが判明した。また2報の論文を発表した。 2)2種の外来テントウムシの分布様式と在来テントウムシの種間相互作用の比較 本年も近畿地方を中心に外来捕食性フタモンの分布や生態調査を行った。2006年のフタモンのトウカエデ上での密度は過去3年間に比べて低かったが、在来種のナミに比べて密度は高かった。シャリンバイ上でも、フタモンの密度は過去3年間に比べて低く、ナミの密度がフタモンより高い傾向があった。樹種によるテントウムシ密度の違いは、各樹種でのアブラムシの発生時期と関係があると推察され、アブラムシが早期に発生するトウカエデでは、フタモンが優勢になり、シャリンバイではアブラムシの発生がやや遅く、ナミが優勢になりやすいと推察された。なお、2006年はフタモンの分布拡大は認められなかった。南西諸島に侵入した外来種ハイイロの分布調査を行なったところ、沖縄本島、石垣島、西表島での分布が確認された。しかし、慶良間島の阿嘉島では、ハイイロの生息するギンネムがかなり少なく、ハイイロの分布は確認できなかった。 3)日本におけるナミを中心にした捕食性テントウムシの種間相互作用の解明 2種テントウムシのナミとナナ4齢幼虫にマメアブラムシまたはギルド内餌(ヒメカメ)を与えたときの生存と餌変換効率について明らかにした。ギルド内餌を与えたとき、発育を完了した4齢幼虫の割合はナナで42.9%、ナミで100%だった。アブラムシを餌としたときは、両種ともに100%の幼虫が発育を完了した。ギルド内餌を与えたときの2種4齢幼虫の餌変換効率は、アブラムシを与えたときの値に対し、ナミで1.4、ナナで0.8だった。さらに、ナナとナミの1令幼虫がフタモン4令幼虫によるギルド内捕食の影響を明らかにした。フタモン4令に捕食された1令の割合はナナで50.0%、ナミで0だった。また10分間の観察により、フタモン4令による捕食に対するナナとナミ1令の影響を評価した。フタモン4令がナナまたはナミ1令に接触した際に「攻撃しなかった」平均回数はナナで1.4±0.7、ナミで13.6±2.1だった。また死んだナミ1令を用いた場合、フタモン4令が「攻撃しかなった」平均回数は0.7±0.6に減少し、ナミからの体液の分泌がフタモンからの攻撃回避となっていると思われた。
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Research Products
(4 results)