2004 Fiscal Year Annual Research Report
南極産好冷生物酵素の構造進化と低温活性発現機構及びそのタンパク質工学的利用
Project/Area Number |
15380074
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡邉 啓一 佐賀大学, 農学部, 教授 (40191754)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本島 浩之 佐賀大学, 農学部, 助手 (20312275)
|
Keywords | 低温プロテアーゼ / サチライシン / X線結晶構造 / ゆらぎ / Pseudoalteromonas / 低温適応酵素 / タンパク質工学 |
Research Abstract |
南極産好冷細菌(Pseudoalteromonass sp.AS-11)が生産するサチライシン様低温プロテアーゼApa1は、サチライシンに相当する触媒ドメイン(残基1-210及び359-441の293残基)と挿入ドメイン(残基211-358の148残基)からなる。その結晶構造を明らかにした結果(PDB ID、1V6C)、挿入ドメインのゆらぎや触媒ドメインとの間でのねじれが低温での高い触媒活性に関与している可能性が示唆された。この挿入ドメインは、中温酵素サチライシンCarlsbergのβ8-9ストランド間に位置しており、この領域はCarlsbergでは、安定なβターン構造(PTN配列)をとっている。そこで、CarlsbergのPTN配列をより柔軟性の高い構造に変化させた変異体(FDG、GTN及びNAGSSTPSS配列に置換した変異体)を作成し、これらの変異体の活性と安定性を解析し野生型と比較した。酵素反応を解析した結果、野生型<FDG<GTN<NAGSSTPSSの順に、変異部位の柔軟性が増加すると共に低温活性が上昇し、その上昇は酵素-基質複合体形成後の触媒反応速度の上昇によることが明らかになった。さらに、変異による触媒反応速度の上昇は、活性化エンタルピーの低下によることが示された。また、熱失活速度は、野生型<FDG<GTN<NAGSSTPSSの順に増加し、熱失活の活性化エンタルピー及びエントロピーは減少したことから、未変性状態は野生型、FDG、GTN、NAGSSTPSSの順にゆらいだ構造をしているものと推定された。活性部位と離れた位置にある部位の柔軟性の増加が、酵素の低温活性の上昇を引き起こすという本研究結果は、酵素構造のゆらぎと触媒活性の関係を理解する上で極めて重要であり、中温酵素の低温活性を上昇させるための新たなタンパク質工学的な戦略につながるものと期待される。
|
Research Products
(1 results)