2003 Fiscal Year Annual Research Report
共役トリエン脂肪酸、トコトリエノール、糖化リン脂質による血管新生の調節機能と展開
Project/Area Number |
15380086
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮澤 陽夫 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20157639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 まり 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (50192430)
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Keywords | 血管新生阻害 / 共役トリエン脂肪酸 / トコトリエノール / 糖化リン脂質 / 癌 / 動脈硬化 / 糖尿病性網膜症 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
血管新生は既存の血管から新たな血管ができる現象であり、内皮細胞の増殖、遊走および管腔形成の3過程を経て進む。この現象は癌、動脈硬化、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎などの多くの難治性疾患の発症と進展に深く関与する。たとえば癌の場合、新生血管から栄養を受け取ることで増殖し、この血管を通って転移する。したがって、血管新生をターゲットとした癌治療が近年注目を集めている。またこの様な血管新生病の食品成分・食品素材による予防は大きな社会的関心の的でもある。 これまでの我々の予備実験で、(1)癌細胞を移植したヌードマウスに共役トリエン脂肪酸を経口投与すると、癌組織の著明な退縮作用をもたらすことを確認し、この癌組織退縮の機構として共役トリエン脂肪酸による血管新生阻害機能が示唆されている。(2)ビタミンE同族体であるトコトリエノールが極めて低濃度で血管内皮細胞の増殖と管腔形成を抑制することを培養細胞実験系で確認しつつある。(3)糖尿病者での過酸化因子としてアマドリ型糖化リン脂質の存在を確認しつつあり、この糖化脂質が培養細胞系で血管新生を誘発促進する因子であることがわかりつつある。 そこで本研究では、血管新生阻害作用が発見された共役トリエン脂肪酸とトコトリエノールの作用機構と実用性を培養細胞実験と動物実験で明確にするとともに、逆の血管新生促進作用を有するとして発見された糖化アミノリン脂質の生成阻害物質を食品・食材から発掘することを目的とした。 本年度(平成15年度)の研究成果として、(1)共役トリエン脂肪酸(とくに共役エイコサペンタエン酸)による血管新生阻害機構を培養細胞実験で明らかにした。活性の高い共役トリエン脂肪酸の有機合成に成功し、次年度の動物実験に供する準備が整った。(2)トコトリエノールによるプロティンキナーゼC阻害を介した血管新生抑制機構を培養細胞実験で解明した。(3)アマドリ型糖化リン脂質によるマトリックスメタロプロテアーゼ分泌亢進を介した血管新生促進の機構を培養細胞実験で明らかにした。 上記の研究成果を基に、次年度は共役トリエン脂肪酸、トコトリエノール、糖化脂質の作用を生体モデル(in vivo)で評価する。これにより血管新生病といわれる動脈硬化症、糖尿病、癌を予防する食品成分・食材を明示する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] J.-H.Oak, K.Nakagawa, S.Oikawa, T.Miyazawa: "Amadori-glycated phosphatidylethanolamine induces angiogenic differentiations in cultured human umbilical vein endothelial cells"FEBS Lett.. 555. 419-423 (2003)
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[Publications] H.Inokuchi, H.Hirokane, T.Tsuzuki, K.Nakagawa, M.Igarashi, T.Miyazawa: "Anti-angiogenic activity of tocotrienol"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 67(7). 1623-1627 (2003)
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[Publications] T.Tsuzuki, M.Igarashi, M.Komai, T.Miyazawa: "The metabolic conversion of 9,11,13-eleostearic acid(18:3)to 9,11-conjugated linoleic acid(18:2)in the rat"J.Nutr.Sci.Vitaminol.. 43(3). 195-200 (2003)
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[Publications] T Miyazawa, H.Inokuchi, H.Hirokane, T.Tsuzuki, K.Nakagawa, M.Igarashi: "Anti-angiogenic potential of tocotrienol in vitro"Biochemistry(Moscow). 69(1). 67-69 (2004)
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[Publications] T.Tsuzuki, M.Igarashi, T.Miyazawa: "Conjugated eicosapentanoic acid inhibits transplanted tumor growth via membrane lipid peroxidation in nude mice"J.Nutr.. (in press). (2004)
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[Publications] T.Tsuzuki, Y.Tokuyama, M.Igarashi, T.Miyazawa: "Tumor growth suppression by α-eleostearic acid, a linolenic acid isomer with a conjugated triene system, via lipid peroxidation"Carcinogenesis. (in press). (2004)