Research Abstract |
ナラ類集団枯損被害地域1府15県から分離されたRaffaelea quercivora 90菌株の同一性を明らかにするため,簡易な解析手法を検討した。まず培地上での菌糸成長速度,菌糸伸長量,菌叢タイプの形態的特徴を比較し,地域間での違いを検討した。その結果,日本海側の被害地域から分離された菌株の菌糸伸長量は,紀伊半島地域のものより有意に速く,菌叢タイプも多様であることが明らかになった。このことは,R.quercivoraの多様な生育特性,地域間の種間変異や種内変異が存在する可能性を示唆するものと考えられた。 次に,11府県の被害地域から分離されたRaffaelea quercivora 56菌株の核リボソームDNAのinternal transcribed spacer (ITS)領域におけるrestriction fragment length polymorphism (RFLP)解析を行った。ITS領域は,ITS1とITS4プライマーで増幅され,その領域は約660bpであった。その後,種を識別するため,'Raffaelea属の1種を同時に解析した結果,9種類の制限酵素の内,Afa I, Alu I, Hae III, Bcn Iで消化したバンドパターンに明らかな違いがみられた。そこでその4種類を用いてR. quercivoraのITS産物を消化した結果,Afa Iで280,160,130bp, AluIで450,190bp, Hae IIIで270,170,100bp, Bcn Iで320,140,110bpであり,すべて同一のバンドパターンを示す菌株であることが明らかとなった。 各地域でカシノナガキクイムシの被害木を採集し,羽化した成虫の形態的変異を調べた。京都府および和歌山県産については,丸太および人工飼料を用いた飼育を行い,両地域の雌雄を交換した場合の繁殖可能性も検討した。また,比較のため,カシノナガキクイムシと同所的に生息する近縁種のヨシブエナガキクイムシに関しても,人工飼育を試みた。さらに,カシノナガキクイムシと類似した被害や生態を示す,甲虫類の調査や実験を行った。
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