2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナラ類集団枯死被害に関与する養菌性キクイムシとその共生菌の分子生物学的研究
Project/Area Number |
15380103
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 進一郎 三重大学, 生物資源学部, 教授 (90092139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶村 恒 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (10283425)
松田 陽介 三重大学, 生物資源学部, 助手 (30324552)
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Keywords | Raffaelea quercivora / カシノナガキクイムシ / ハンノキキクイムシ / ナラ類集団枯損 / ITS領域 / mtDNA / RFLP解析 / IGS領域 |
Research Abstract |
感受性の異なるブナ科4樹種に対しRaffaelea quercivoraを接種し,菌糸の動態と防御反応を比較した.その結果,菌糸の伸展はいずれの樹種も接種7〜10日後にその速度が落ちた.スベリンの呈色反応は,アラカシで接種3日後に見られ10日後に顕著になったが,ミズナラは14日後まで部分的であった.スベリンとリグニンが堆積した組織より外側では,菌糸は観察されなかった.感受性の差異に関与する非通水域の拡大は接種14日以内であることから,菌糸は非通水域が拡大する期間に伸展し,組織内にスベリンやリグニンが堆積することによって停止すると考えられた. DNA解析に供試するRaffaelea quercivora菌株を新たに58菌株増やして、ナラ類集団枯死被害の発生する異なる地域から分離された病原菌の核リボソームDNAのITS領域のRFLP解析を継続した結果、これまでに本種の識別に有効と示唆された3種類の制限酵素(Afa I、Alu I、Bcn I)によって、いずれの菌株も過去のデータと同一のバンドパターンを示すことが明らかとなった。このことから、日本各地で発生している本被害には、R.quercivoraが関与していることが遺伝的に示唆された。また、それらの種内変異と地域間差異を明らかにするため、核rDNAのIGS領域を対象としたDNA解析方法を検討した。 形態的特異性が認められる和歌山県産のカシノナガキクイムシと京都個体群との交配実験を行い、成虫の体サイズと坑道形成が繁殖成功に与える影響を検討した。また、養菌性キクイムシを生け捕りするための新しいトラップを開発し、北海道から沖縄県までの約20地点で重要な害虫ハンノキキクイムシの採集を行い、その遺伝的構造を解析し(mtDNAのCytochrome oxidase subunit I(CO I)領域を対象)、系統は大きく2クレードに大別され、北海道と本州以南で遺伝的な分化が大きいことが明らかになった。
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Research Products
(12 results)