2005 Fiscal Year Annual Research Report
希少猛禽類イヌワシとの共存を目指した森林施業法の確立
Project/Area Number |
15380112
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
由井 正敏 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (20305329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梨本 真 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 部長
松木 吏弓 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 主任研究員 (00371534)
阿部 聖哉 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 主任研究員 (80311273)
関島 恒夫 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10300964)
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Keywords | イヌワシ / 列状間伐 / 行動圏 / 採餌行動 / 餌動物 / ノウサギ / DNA / ヘビ類 |
Research Abstract |
1.調査対象のイヌワシYつがいの全期間行動圏は84Km^2、繁殖期の採餌行動圏は約30Km^2となった。そのうち採餌行動に適した低木草地はGIS解析の結果1-3Km^2しかなく、このことがイヌワシYつがいの繁殖成績が10%台と低い原因と考えられた。列状間伐区でのイヌワシによる探餌行動がYつがいで、また、直接突っ込んだ採餌行動がKつがいで確認されたが、頻度は全般に低かった。ビデオ撮影を含む餌内容調査では、ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類などが主食であり、これは20年前と同様であった。 2.列状間伐後にノウサギが餌として利用できる植物の増減を調べるため,列状伐採地と非伐採地に調査区を設置し,植物の株数、萌芽枝数などに関する調査を引き続き行った。伐採年直後多数発生した高木の萌芽枝は数が減少し,一部はノウサギに利用不可能な高さにまで成長した。また、調査地からサンプリングしたノウサギの糞を利用して,マイクロサテライトDNAによる個体識別を行った。その結果,伐採翌年に列状伐採地を利用した個体は少なくとも5頭いることが確認された。 3.イヌワシを上位捕食者とした食物網に対する列状間伐の効果を評価するため、行動圏内に設けた列状間伐区、対照区、既存の採餌区の3カ所において主要な餌種であるノウサギ・ヘビ等の個体数推定とイヌワシの探餌頻度の関係を引き続き調べた。調査は植物のフェノロジーに合わせ、5-11月の間4回行った。列状間伐後、有意に増加した列状間伐区のノウサギ個体数は3年目に入り減少し、他の区と同程度の密度水準に至った。列状区内のノウサギ個体数も、残存列と列状間伐列の間で明瞭な差異はなかった。 4.ノウサギの糞を用いた葉緑体DNA解析と食痕調査からノウサギの選好餌植物を特定した後、100コドラート全ての植物の総重量、選好餌植物上位5種各種における総重量と可食部位重量、および被覆度を独立変数とし、ノウサギ糞粒数を従属変数とした重回帰分析を行ったところ、有意な回帰モデルは季節を通じて得られなかった。これらの結果から、列状間伐後3年目において、列状間伐区がノウサギにとって不適な生息環境になったこと、加えて、ノウサギの生息環境選択が餌植物量の制約を受けていないことを示唆している。
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Research Products
(5 results)