2003 Fiscal Year Annual Research Report
種苗放流による資源量および遺伝的多様性の同時修復手法の解明
Project/Area Number |
15380133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
北田 修一 東京海洋大学(東京水産大学), 海洋科学部, 教授 (10262338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 洋久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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Keywords | 遺伝的集団構造 / 連鎖不平衡 / 種苗放流効果 / 遺伝的影響 / 統計的推測 / ベイズ型階層モデル / ニシン / サクラマス |
Research Abstract |
初年度にあたる今年度は、種苗放流によって資源量および遺伝的多様性を同時修復する手法の解明の基礎として、1、種苗放流が資源量に与える影響の評価および、2、種苗放流が天然資源に与える遺伝的影響の検証、に取り組んだ。 1では、北海道全域で展開されているサクラマスの種苗放流を事例として、水揚げの2段サンプリング調査に基づき放流効果を評価するとともに、最適な調査戦略を明らかにした。また、放流効果に大きく関与している遊漁者の釣獲量を、クラスターサンプリングの比推定と回帰推定により推定・比較した。 2では、保全遺伝学における統計的仮説検定の限界を指摘し、経験ベイズによる仮説検証法を開発した。そこでは、多型性の高い遺伝マーカーを用いる場合に起きるマイナーな対立遺伝子の取り扱い方法も提示し、マグイのmtDNAのデータに適用して遺伝的影響仮説を検討した。さらに、同様のベイズの枠組みで、集団構造を許した連鎖不平衡と遺伝的分化の新しい推定法を開発し、アユのアイソザイムと人類のSNPデータを解析した。野生生物集団はメタポピュレーション構造を持つものが多いが、本方法は、これを含め集団構造がある場合にも分化の大きさと連鎖不平衡を同時推定できる点で新しい。本方法の普及のため、汎用プログラムの開発を開始した。来年度にはホームページ等から無償でダウンロードできるシステムを開発する予定である。 上記の方法論の開発研究のほか、長期にわたる大量放流の遺伝的影響を実際に評価するため、地域性にニシンを対象として、厚岸湖、湧洞沼、噴火湾の天然魚および厚岸湖の放流魚の標本約1,400個体を収集した。筋肉からゲノムを抽出し、マイクロサテライトDNA5遺伝子座における変異を標本全個体についてタイピングした。また、各天然集団からそれぞれ100個体を抽出し、マイクロサテライトDNAおよびmtDNAのD-LOOP領域のRFLP分析の両方を行った。これらのデータについては、現在解析中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kitada, S., H.Kishino: "Simultaneous detection of linkage disequilibrium and genetic diffrentiation of subdivided populations."Genetics. 166(印刷中). (2004)
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[Publications] Kitada, S., H.Kishino: "Examining genetic effect hypotheses of hatchery fish on wild populations : a Bayesian approach."Stock Enhancement and Sea Ranching 2nd Edition, -developments, pitfalls and opportunities. 153-167 (2004)
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[Publications] Miyakoshi, Y., M.Nagata, K.Sugiwaka, S.Kitada: "Evaluation of stock enhancement programs for masu salmon in Hokkaido, northern Japan, by two-stage sampling surveys of commercial landings."Stock Enhancement and Sea Ranching 2nd Edition, -developments, pitfalls and opportunities. 187-198 (2004)
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[Publications] Miyakoshi, Y., T.Koyama, T.Aoyama, S.Sakakibara., S.Kitada: "Estimates of numbers of masu salmon caught by recreational fishermen in the coastal area off Iburi, Hokkaido, Japan."Fishery Science. 70. 87-93 (2004)
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[Publications] K.M.Leber, S.Kitada, T.Svasand, H.L.Blankenship (Eds.): "Stock Enhancement and Sea Ranching 2nd Edition, -developments, pitfalls and opportunities"Blackwell Science. 566 (2004)