2004 Fiscal Year Annual Research Report
農村金融におけるソーシャル・キャピタルの役割に関する国際比較研究
Project/Area Number |
15380148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉田 洋一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10125809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
万木 孝雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30220536)
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Keywords | 農村金融 / ソーシャル・キャピタル / マイクロファイナンス / 開発金融 / 国際比較 / 交換労働 / ベトナム / むら |
Research Abstract |
本研究の目的は村落レベルの共同性が農村金融や労働慣行にどのような影響を与えているかを、ベトナム、フィリピン、バングラデシュ、中国、日本等の事例をとりあげて比較研究するものである。前年度は主に文献や基礎的な調査によって問題点を絞ることに主眼をおいた。今年度はより詳細に、各地での調査を実行し、そのことによって、多くのことが明らかになったと思える。 まず北部ベトナム(Yen Bai省)を対象に、当地におけるNGO (Save the Children Japan)のマイクロファインナンス調査を、8月の予備調査および11月の本格調査を通じて行った。NGOの小口金融活動はベトナム農村のある種のグループに支えられて、養豚等の拡大など大きな効果を上げている。ただし女性向けの融資は家計全体の中にいわばとけ込み、必ずしも貧困家計にのみ貸し出されているわけではないこと、役職層に貸し出されるケースが多いことなどが判明している。またベトナム社会政策銀行の問題点が指摘された。 また大学院の新保はフィリピンのCARDを克明に調査し、CARDにみられるマイクロファイナンスの商業化について議論を行った。彼女の調査研究によれば、CARDは十分な持続性を実現しておるものの、貧困者への到達度という点では問題を生じさせており、いわゆるMission Driftが部分的に生じていることを示した。これはマイクロファイナンスの方向性として云われている商業化に対し重大な問題提起を行うものである。 宮西は沖縄波照間における労働慣行を数回にわたって調査し、さとうきびの収穫にかかわる労働慣行の変容を、その島における伝統的な労働交換慣行(ユイマール)との関連で論じた。彼女の分析は質の高いものであり、「農業経済研究」という学術誌に掲載されることになっている。 泉田はバングラデシュのマイクロファイナンスを調査し、グラミン銀行やNGOの金融活動をその持続性と到達度いう視点から検討している。バングラデシュのマイクロファイナンスセクターは借入者数を増やし、貯蓄額を増加させているが、部分的にはまだ補助金に頼っている点があり、改善の余地が大きいことが判明した。また金融活動全体の費用が大きく、BRACやASAといった費用効率的なNGOの活動参考にした改革が必要であると考えられる。
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Research Products
(4 results)