2004 Fiscal Year Annual Research Report
農村と都市が共存するための社会共通基盤としての農業水利施設の機能分析とその評価
Project/Area Number |
15380163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三野 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (10026453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 公人 京都大学, 農学研究科, 講師 (30293921)
荻野 芳彦 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60032992)
堀野 治彦 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (30212202)
中桐 貴生 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助手 (80301430)
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Keywords | ため池 / 農業用水路 / 農地 / 多面的機能 / 洪水緩和機能 / 気候緩和機能 / 土砂流防止機能 / 都市化地域の社会基盤 |
Research Abstract |
主に大阪府岸和田市に調査地区を設定し,ため池及びその周辺地域を中心に水文気象観測を実施し,観測データの解析を行った.得られた知見は以下の通りである. (1)観測降雨事象を対象に洪水緩和機能の発現状況を定量的に確認した,洪水緩和機能は空き容量がない場合にも発揮されること,降雨強度による影響があることが明らかになった. (2)ため池の構造条件の変化に伴う流出量の変化について貯留追跡法によって解析した結果,満水面積が小さく,余水吐幅が大きなため池でもある程度の洪水緩和機能が発揮されることが示された. (3)複数のため池及び水路が組み合わさった場合の全体としての洪水緩和機能を単独のため池調査から得られた知見をもとにシミュレーションを行って評価した.その結果,河道の影響よりもため池によるピーク流出量の遅れ効果が大きいこと,集水域よりもため池特性の変化の方が影響が大きいこと,並列型よりも直列型ネットワーク構造の方が緩和量が大きくなることが示された. (4)気象観測結果から,市街地内に存在している農地やため池によって,周囲よりも気温が低下していることが示され,農地の気候緩和機能が確認された. (5)気象観測結果を利用したニューラルネットワークによる解析により,地域内に分散している多くのため池が急激に減少すると気温環境に影響を及ぼすことなどが示された. (6)ため池による下流への土砂の流出負荷量軽減効果が観測された.これは,空き容量への貯水による土砂の貯留,流入濁水のため池下層への潜り込み,流入水と土砂の流出部への到達時間の差によって発揮される. 次年度は,蓄積した観測データをもとに,ため池及びため池ネットワークの洪水緩和機能,農地・ため池の気候緩和機能,ため池の土砂流出防止機能の発揮メカニズムのモデル化をより発展させるとともに,経済評価も考慮してこれらの機能をより発揮させるための新しい都市近郊農業のあり方について提案を行う.
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