2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜の水透過性及び細胞壁の表面性状と農産物の品質低下メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
15380170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 義雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (70376565)
川越 義則 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (80234053)
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Keywords | 膨圧 / 細胞膜の水透過性 / ホウレンソウ / ミスティング / 萎れ / 目減り |
Research Abstract |
葉菜類をはじめとする農産物は、収穫後も呼吸や蒸散などの生命活動を営んでおり、基質の分解、水分の損耗により商品としての品質が劣化する。植物細胞は、細胞内部に発生する高い(0.1〜1.5MPa)膨圧により形を維持しており、葉菜類の萎れ防止を考える上で、膨圧は、細胞膜の水透過性と共に、重要な要因である。 そこで、ホウレンソウを試料として、貯蔵温度の違いによる膨圧の経時変化を調べ、膨圧と目減りの関係を検討した。貯蔵温度は、20℃及び2℃とした。また、小売店等の現場で行われているミスティング(葉菜類に水滴を吹きかけて萎れ回復を図る手法)や水通し(水に浸けて萎れ回復を図る手法)の効果についても検討した。膨圧の測定には、プレッシャープローブ法を用いた。 その結果、ホウレンソウ葉肉細胞の膨圧は、貯蔵開始時点で0.1MPa程度であり、環境湿度が95%以上であったにも関わらず、20℃貯蔵区、2℃貯蔵区ともに、膨圧は時間経過と共に低下したが、2℃貯蔵区の方が高い膨圧を維持した。この膨圧の維持の程度に対応して、20℃貯蔵区では3日経過後には商品価値がないとみなせるほどのホウレンソウの萎れが見られたが、2℃貯蔵区では3日経過後も外観品質の低下は見られなかった。これは目減りの違いとして現れたもので、膨圧は、貯蔵温度に関係なく、目減りと共に直線的に減少することが示された。さらに、累積CO_2放出量と膨圧との間にも同様の相関関係が認められた。一方、ミスティングについては、貯蔵開始からの目減りが4〜9%の範囲であれば、ミスティングによる膨圧の回復が可能であることが示された。以上により、低温環境が細胞膜の水透過性の維持に有効であり、その結果として膨圧が維持されることが定量的に示された。これは、前年までに確認された細胞膜の拡散水透過係数の増大が低温により抑制されるという結果と符合するものである。
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Research Products
(1 results)