Research Abstract |
(1)オーチャードグラスは仙台以南で集団の急速な衰退が起こる。この衰退には,7〜9月の平均気温が関与していることを平成15年に明らかにしてきた。特に,高温条件では明反応の主要な部分である光化学系IIの機能損傷が起こることを昨年度明らかにした。今年度は,これらの研究結果を基に,夏期の高ストレスが光化学系IIに与える損傷程度に関するC3型牧草種間差異について研究した。日本で栽培されている,代表的な寒冷型牧草種10種(イタリアンライグラス,ペレニアルライグラストールフェスク,オーチャードグラス,シープフェスク等)を用いて,人工気象室で高温処理を与え,その後の光化学系IIの機能損傷程度をクロロフィル蛍光の減衰から明らかにした。高温処理は,25℃で育てた植物を3日間,30℃,35℃,40℃で育てその後クロロフィル蛍光値(Fm/Fv)を調べた。クロロフィル蛍光値は,40℃条件まで低下せず,どの種も35℃くらいの高温では機能損傷を受けないことが分かった。 (2)40℃に3日間処理した個体は,一部の種でやや低下したものの,多くの種では低下が見られなかったので,1週間の処理を継続したところ,多くの種でクロロフィル蛍光の低下が見られた。したがって,光化学系IIの活性低下には,40℃の高温が1週間程度続くことで生じるものと考えられた。 (3)クロロフィル蛍光値の低下には,10種間で有意な差が見られた。イタリアンライグラスやオーチャードグラスなど生長の速い種が,シープフェスクやハルガヤのような生長の遅い種よりも高温ストレスを受けやすい傾向を示した。また,葉の含水率や乾物密度と高い相関を示し,葉の含水量が多く,密度が小さい種で高温ストレスを受けやすい結果となり,種間の高温ストレス耐性が,植物の適応戦略と密接に関係していることが明らかとなった。
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