2003 Fiscal Year Annual Research Report
絶食および低栄養ストレスによる生殖機能抑制の脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
15380193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
束村 博子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00212051)
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Keywords | グルコース利用阻害 / 延髄弧束核 / 視床下部室傍核 / 低エネルギーストレス / ラット / 黄体形成ホルモン(LH) / ノルアドレナリン作動性神経 / エストロジェン |
Research Abstract |
低栄養や絶食など低エネルギーストレスを負荷された動物において生殖機能が抑制される。報告者らは、低エネルギーストレスによる生殖機能抑制のメカニズムの解明を最終目的としていくつかの実験を行った。本年度は、1)グルコース利用阻害によるLH分泌抑制を仲介する神経系の同定、および2)グルコースの利用阻害を感知する脳内機構の解明を目指し下記の実験を行った。 卵巣除去を施したラットを用い、Fosタンパクの発現を指標として、グルコース拮抗剤(2DG)を投与することにより活性化される神経核の同定を行った。さらに、この神経の活性化がエストロジェン処理の有無により影響を受けるか否かを検討した。免疫組織化学によりFos免疫陽性細胞の有無を確かめたところ、エストロジェン依存性に、視床下部室傍核(PVN)および延髄孤束核(NTS)においてFos免疫陽性細胞の増加が認められ、NTSにおけるFos免疫陽性細胞の殆どが、細胞質にチロシン水酸化酵素(TH)を持つことが明らかとなった。この結果から、グルコース利用阻害はNTSのA2領域に細胞体をもち、かつPVNに投射するノルアドレナリン作働神経を活性化させること、またこの活性化にエストロジェンが重要な働きをすることが示唆された。 これまでの研究結果により、下位脳幹の脳室周囲付近に存在するグルコキナーゼ免疫陽性の上衣細胞がグルコース利用阻害を感知を担うとの仮説を立て、これを明らかにするための実験を行った。ラット第4脳室付近の上衣細胞をin vitro系に取り出し、培養液中のグルコース濃度を変化させたところ、低グルコースあるいは高グルコースに反応して、細胞内カルシウム濃度が上昇する上衣細胞が確認された。また、このカルシウム濃度の上昇は、グルコキナーゼの活性阻害剤の共培養により阻害されたことから、グルコース濃度変化による細胞内カルシウム濃度の上昇は、グルコキナーゼの作用により仲介されることが示唆された。以上の結果より、第4脳室を裏打ちする上衣細胞が血糖利用性の感知を担う細胞である可能性が高いことが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Moriyama, R.: "Glucoprivation-induced Fos expression in the hypothalamus and medulla oblongata in female rats"Journal of Reproduction and Development. 49. 151-157 (2003)
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[Publications] Kinoshita, M.: "A rat model for the energetic regulation of gonadotropin secretion : Role of the glucose-sensing mechanism in the brain"Domestic Animal Endocrinology. 22. 65-76 (2003)
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[Publications] Kondo, J.: "Lactation-associated infertility in Japanese Monkeys (Macaca fuscata) during the breeding season"Zoo Biology. 22. 65-76 (2003)
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[Publications] Moriyama, R.: "In vitro increase in intracellular calcium concentrations induced by low or high extracellular glucose levels in ependymocytes and serotonergic neurons of the rat lower brainstem"Endocrinology. 145(In press). (2004)
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[Publications] Kinoshita, M.: "Fourth ventricular alloxan injection suppresses pulsatile luteinizing hormone release in female rats"Journal of Reproduction and Development. 50(In press). (2004)
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[Publications] 束村博子: "ブルーバックス「生命をあやつるホルモン」"講談社. 238 (2003)
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[Publications] 束村博子: "ジェンダーを科学する"ナカニシヤ出版(印刷中). (2004)