2004 Fiscal Year Annual Research Report
絶食および低栄養ストレスによる生殖機能抑制の脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
15380193
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
束村 博子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00212051)
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Keywords | 低栄養 / グルコース感知 / 上衣細胞 / セロトニン作動性ニューロン / グルコキナーゼ / 黄体形成ホルモン(LH)パルス / 細胞内カルシウム / ラット |
Research Abstract |
低栄養や絶食など低エネルギーストレスを負荷された動物において生殖機能が抑制される。報告者らは、低エネルギーストレスによる生殖機能抑制のメカニズムの解明を研究の最終目的とする。本年度は、脳内グルコース感知機構解明を目指し下記の実験を行った。 メスラットを用い、下位脳幹の脳室周囲付近に存在するグルコキナーゼ免疫陽性の上衣細胞がグルコース利用阻害を感知する機構であるとの仮説を立て、これを明らかにするための実験を行った。ラット第4脳室付近の上衣細胞をin vitro系に取り出し、培養液中のグルコース濃度を変化させたところ、低グルコースあるいは高グルコースに反応して、細胞内カルシウム濃度が上昇する上衣細胞が確認された。また、このカルシウム濃度の上昇は、グルコキナーゼの活性阻害剤であるアロキサンの共培養により阻害されたことから、グルコース濃度変化による細胞内カルシウム濃度の上昇は、グルコキナーゼの作用により仲介されることが確認された。 また、同in vitro系においてセロトニン作動性ニューロンの起始核である不確縫線核より得られた細胞において、おもに高濃度のグルコースに対して細胞内カルシウムの上昇が認められ、さらにこれらのセロトニン免疫陽性細胞にグルコキナーゼの共存が認められた。以上の結果より、第4脳室を裏打ちする上衣細胞およびセロトニン作動性ニューロンが血糖利用性の感知を担う細胞である可能性が高いことが示唆された。 さらにin vivoにおいて、ラット第4脳室内へ、アロキサンを投与したところ、黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌が速やかに抑制されたことから、第4脳室周囲の細胞におけるグルコキナーゼの活性の維持が、正常な生殖機能の維持に重要であることが明らかとなった。 以上の結果より、動物の栄養状態は第4脳室付近の上衣細胞およびセロトニン作動性ニューロンにより完治され、LH分泌の調節を介して、生殖機能が制御されることが示唆された。
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Research Products
(8 results)