2005 Fiscal Year Annual Research Report
絶食および低栄養ストレスによる生殖機能抑制の脳内メカニズムの解明
Project/Area Number |
15380193
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
束村 博子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00212051)
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Keywords | 黄体形成ホルモン(LH) / ノルアドレナリン作動性神経 / エストロジェン / メラノコルチン受容体 / 分界条床核 / ラット / ヤギ / メタスチン |
Research Abstract |
ラットをモデル動物として用い、低栄養あるいは絶食ストレスによる生殖機能抑制に関わる神経伝達物質を明らかにするための実験を行った。分界条床核(BNST)に投射するノルアドレナリン作動性神経の活性化が低栄養による黄体形成ホルモン(LH)分泌抑制を仲介するとの仮説を立て、BNSTに直接ノルアドレナリンを投与したところ、エストロジェン依存性にパルス状LH分泌が有意に抑制された。また、この抑制は、各種アドレナリン作動薬のうち、アルファ受容体作動薬の投与によって再現され、ベータ作動薬は何ら効果を持たなかったことから、BNSTに投射するノルアドレナリン作動性神経は、アルファ受容体を介してLH分泌を抑制することが示唆された。このLH分泌抑制がエストロジェン依存性であった事から、BNSTに投射するノルアドレナリン作動性神経は、同様にエストロジェン依存性である低栄養によるLH分泌抑制を仲介する可能性が高いと考えられた。 さらに、反芻家畜であるヤギを用いて、栄養因子による生殖機能制御に関わる神経ペプチドの役割を明らかにするための実験を行った。摂食および生殖機能の両方の調節に関わる可能性が高い神経ペプチドのうち、メラノコルチン受容体を介する系に注目し、メラノコルチン受容体作動薬を脳内に投与したところ、用量依存性にパルス状LH分泌と同期して観察される多ニューロン発火活動(MUA)の発火頻度を上昇させた。この結果により、メラノコルチン受容体が栄養によるLH分泌制御を仲介する可能性が示唆された。 また、LH分泌を制御する新規神経ペプチドとして、KiSS-1遺伝子がコードする神経ペプチドであるメタスチンに注目し、メタスチンがLH分泌制御および正常な性周期の維持に中心的な働きをすることを、ラットを用いて明らかにした。今後は、低栄養によるLH分泌抑制が、脳内メタスチン合成・分泌の抑制によるものであるか否かを確認する予定である。
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Research Products
(5 results)