Research Abstract |
診断法改善:2005年1月に虫卵および糞便内抗原排出犬を確認し,開発中の診断システム(虫卵DNA検出)により確定診断を行った。本例は,エキノコックス感染犬の届け出制施行後初めての報告となった。現法は虫卵DNAの検出システムであるため,糞便内抗原のみ陽性で虫卵を排出していない犬(例えば,感染早期で感染虫体が未熟な時期)のDNA診断はできない。そこで,現在,感染早期の糞便を用いたDNA診断,および排泄虫体が含まれる駆虫後の糞便におけるDNA診断の可能性について感染実験を行って検討している。 野外材料(糞便)については,糞便排泄動物の正確な特定が困難であった。そこで,糞便に含まれる排泄動物の腸細胞由来DNAを用いた糞便排泄動物同定システムを構築した。ミトコンドリアD-loop領域に動物種特異的プライマーを設計し,Multiplex PCRによりキツネ,犬,猫,アライグマ,タヌキおよびイタチ類の同定が可能となった。野外材料で評価した結果,95%の材料で糞便排泄動物が特定でき,今後,動物種別の感染率評価が可能となった。 疫学調査:都市圏におけるリスクマップ作成のため,札幌市北東部においてキツネの営巣地選択調査を行なった結果,農家の離れや廃屋などの人工物を利用した巣が約20%を占め,河川または小川に近く,幅員5.5m以上の舗装道路から遠い場所に巣が偏っていた。本年度はキツネを捕獲できなかったため,発信器装着による調査は来年度に行う予定である。 また,小樽市では有害鳥獣駆除されたキツネ50頭および排泄動物を上記方法で特定した野外採取の糞便76検体を検査したところ,キツネの糞便内抗原陽性率および虫卵陽性率は10%以下であった。本地域では,キツネへの駆虫薬入り餌散布が2001年より行われており,駆虫薬散布前に50%以上であった感染率が駆虫薬散布により減少していることがわかった。
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