2004 Fiscal Year Annual Research Report
猫免疫不全ウイルス感染症の分子病態制御によるエイズ治療法の開発
Project/Area Number |
15380209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻本 元 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 耕一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (90294660)
岩田 晃 (財)日本生物科学研究所, 研究部, プロジェクトリーダー (70193745)
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Keywords | 猫免疫不全ウイルス / 猫 / 遺伝子治療 / 免疫療法 / small interfering RNA / 樹状細胞 / 骨髄内投与 / レトロウイルスベクター |
Research Abstract |
猫免疫不全ウイルス(feline immunodeficiency virus, FIV)はヒトにおけるHIVと同じレンチウイルス属に分類され、猫に免疫不全症を引き起こす。本研究においては、FIV感染症の分子病態にもとづいた新規治療法を確立することを目的とし、small interfering RNA (siRNA)によるFIV遺伝子発現阻害および樹状細胞(dendritic cell, DC)を用いた抗FIV免疫誘導のシステムを開発した。はじめに、FIVのgag遺伝子に特異的なsiRNAを発現させるhairpin small interfering RNA (shRNA)を発現するレトロウイルスベクターDNAを構築した。このレトロウイルスベクターDNAをパッケージング細胞に導入し、FIV特異的shRNA発現レトロウイルスベクターを得た。このレトロウイルスベクターをFIVに持続感染した線維芽細胞株およびリンパ系細胞株に接種したところ、FIVプロウイルスを保有しているにもかかわらず、FIVのmRNA・タンパク発現および粒子放出が阻害されていることが示された。次に猫の生体におけるレトロウイルスベクターによる遺伝子導入システムを検討するため、レトロウイルスベクターの骨髄内in situ投与を行った。その結果、検討を行った投与後3週間の間、末梢血液、骨髄、およびその他の臓器に本レトロウイルスベクターの組み込みが証明され、骨髄内功in situ導入法の有効性が示された。次に、DCを用いた免疫法を開発するため、健常猫およびFIV感染猫の末梢血単球をIL-4およびGM-CSF存在下で培養し、in vitroでのDCへの分化を試みた。これら細胞は、樹状突起を有するようになり、CDla, CDlc, CD18, CD80, MHC class II, CXCR4, IL-2 receptor陽性を示したことから、DCの分化誘導に成功したものと考えられた。また、これらDCの機能は無症候性キャリアーであればFIV感染猫においても維持されていることが示された。 本研究における成果は、FIV感染症における新規治療法の開発にとって有用な知見を提供するものであるとともに、ヒトのエイズ治療法開発における有用な動物モデルとしても利用できるものと考えられた。
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Research Products
(6 results)