2005 Fiscal Year Annual Research Report
湿原の保全を中心とした地域環境の整備に関する総合的研究
Project/Area Number |
15380226
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Research Institution | Nihon University, JUNIOR COLLEGE |
Principal Investigator |
島田 正文 日本大学短期大学部, 生活環境学科, 教授 (80123173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 紘臣 日本大学短期大学部, 農学科, 教授 (30096755)
河野 英一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20096811)
廣瀬 一美 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20059447)
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Keywords | 赤井谷地 / 地域環境の整備手法 / ホトケドジョウ / 系統解析 / 地下水位 / 矢板工法 / アイガモ農法 / エコミュージアム |
Research Abstract |
本研究にあたっては、15-16年度の結果を踏まえつつ、17年度の研究計画に基づき、福島県赤井谷地沼野植物群落(以下、本湿原とする)の保全方策の検討、地域環境の整備手法に関する検討等を前提として、本湿原および周辺部における水生動物の生息調査、地下水位計測調査、水質調査、環境保全型農法の実験、本湿原の保全等に関する会津市民等を対象としたシンポジウム、意見交換会等を実施した。 その結果、(1)水生動物の生息調査からは、前年度と同様の水生昆虫や魚介類が採捕され、湿原環境に大きい変動は認められなかった。またホトケドジョウについて系統解析を行った結果、福島県内の個体は、北関東集団および東北集団の二つの地域個体群に区分された。このうち本湿原周辺地域での採捕個体は全て北関東集団に属しており、遺伝的変異の少ない単一系統集団であることが把握された。すなわち、遺伝的多様性に乏しい会津地方の固有種であり、今後とも貴重な生物としてその生育に必要な環境の保全が重要であると指摘された。(2)矢板内側における地下水位の計測結果より2001年の矢板施工以降、高位で安定した地下水位の変動を示し、矢板工法は湿原の水環境保全効果が顕著であることが把握された。(3)水質調査の結果からは、湿原内や湧水においてpH、ECおよびNO3で安定した値を示したのに対し、湿原外の排水路および河川においては比較的高い値で不安定な変動を示した。したがって、ミズゴケ湿原復元のための水質環境の改善には、湧水の保全と活用が重要であるものといえる。(4)環境保全型農法の検討にあたっては、湿原の富栄養化や農薬等の散布による生物界の撹乱の回避を目途に、有機資材を主体としたアイガモ農法と水質の関係について検討し、湿原の生物多様性を維持するためには、化学肥料や農薬を使用しないアイガモ農法が生物界を撹乱しない農法として有効であると推察された。また、赤井谷地周辺における農業の実施にあたっては、機械学的手法をもちいつつ生態(耕種)学的手法を重視した農業を地域や国との連携の中で実施することが湿原保全に繋がるものと推察された。(5)周辺地域環境に関わる整備手法の検討にあたっては、昨年度に続き2回目のシンポジウムと2回の湿原保全と利活用に係わる意見交換会(ワークショップ方式)を開催した。その際には、参加者に対する本湿原に係わる意識調査等を通じ、本湿原の認識の向上を図るとともに本湿原の保全や利活用についての意見を集約した。特に、意見交換会においては、本湿原の保全や利活用と市民参加、本湿原を中心としたエコミュージアム(野外環境教育・学習施設)の整備、湿原を活用した環境教育・学習プログラム等について議論し、それらの意見を反映した構想案の作成を試みた。そして、以上から得られた結果を踏まえつつ、赤井谷地の保全を中心とした地域環境整備に関する方向性や今後の課題等について考察した。
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Research Products
(3 results)