Research Abstract |
ラットを用い,岐阜大学の過重力負荷装置による重力魚荷実験,日本無重量研究所の自由落下装置およびダイアモンドエアサービスの放物線飛行により微小重力暴露実験を行い,以下の結果を得た。 1.微小重力負荷により動脈血圧が増加しないにもかかわらず,動脈圧受容器が刺激されるメカニズムについて:微小重力暴露により,胸腔内圧が減少し,'動脈血圧が変化しないにもかかわらず大動脈経壁圧が増加して,大動脈径が増加し,大動脈圧受容器が刺激されることが分かった(Jpn J Physiol,53:151-155,2003)。 2.微小重力に対する頭部循環について:30度頭部挙上では,頭部環流圧が10mmHg増加するにもかかわらず,脳血流量はほぼ一定に保たれている(Jpn J Physiol,53:223-228,2003)。しかし,血液-脳関門外の角膜血流および頭部の筋血流は環流圧増加に依存して増加する(Am J physiol,2004,in press)。これらの変化は腹臥位では見られないことから,微小重力による静水圧差の消失により引き起こされると推測される。 3.過重力負荷に対する交感神経および動脈血圧応答について:過重力負荷により動脈血圧と交感神経活動が増加する(Am J Physiol,286:R25-R30,2004)。動脈血圧増加は,交感神経節遮断薬により見られなくなることから,交感神経活動増加により引き起こされたと推測される。内耳破壊により,動脈血圧増加および交感神経活動増加とも見られなくなる。一方,動脈圧受容器除神経により,動脈血圧増加および交感神経活動増加は,ともに増強される。以上の結果より,過重力負荷に対して,内耳を介して交感神経活動,動脈血圧が増加する内耳-交感神経反射が存在することが分かった。この増加は,圧受容器反射によりバッファーされている。 4.内耳-交感神経反射は,上丘部分で除脳することにより見られなくなることから,上位の中枢が関与していることが推定される。また,過重力負荷により,内耳神経核および第3脳室室傍核にFosの発現が見られたことから,これらの神経核の関与が示唆された(論文準備中)。
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