2003 Fiscal Year Annual Research Report
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15390085
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
鈴木 勉 星薬科大学, 薬品毒性学教室, 教授 (90130757)
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Keywords | メタンフェタミン / 精神依存 / イフェンプロジル / 新規κ受容体作動薬 / グルタミン酸神経系 / NR2Bサブユニット / κオピオイド神経系 |
Research Abstract |
本研究では、覚せい剤依存症に対する治療薬を基礎的に検討することを目的とした。覚せい剤であるメタンフェタミンを慢性処置し、その後休薬期間を設けると、通常では精神依存を示さない用量のメタンフェタミンにより有意な精神依存の増強が認められた。このモデルはヒトにおけるフラッシュバック現象を一部反映しているものと考えられる。そこで、このメタンフェタミン慢性処置によるメタンフェタミンの精神依存増強効果に対する各種NMDA受容体拮抗薬の影響を検討したところ、非競合的にNMDA受容体を拮抗するジゾシルピンならびにケタミンの処置により有意な抑制が認められた。さらには、NMDA受容体拮抗作用を有し、現在臨床において脳梗塞や脳出血後遺症に伴うめまいに使用されているイフェンプロジル処置によっても有意な抑制が認められた。また、グルタミン酸遊離阻害薬であるリルゾールも、メタンフェタミン慢性処置による精神依存の増強を有意に抑制した。一方、メタンフェタミンの慢性処置により、薬物の精神依存に重要な役割を担う前脳辺縁部において、NMDA受容体NR2Bサブユニットタンパク質量の増加が観察されたが、ドパミントランスポーターのタンパク質量には何ら変化は認められなかった。これらのことから、メタンフェタミン慢性処置によるメタンフェタミン誘発精神依存の増強効果には、グルタミン酸神経系の活性化が関与しており、特に前脳辺縁部におけるNMDA受容体NR2Bサブユニットの増加が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。一方、κオピオイド神経は中脳辺縁ドパミン神経を抑制性に調節していることが知られており、数種依存性薬物の精神依存を抑制することが報告されている。しかしながら、既存のκ受容体作動薬はそれ自身で嫌悪効果などの精神症状を発現するため、臨床応用が不可能とされてきた。こうした背景の中、最近、既存のκ受容体とは構造を異にする新規κ受容体作動薬であるTRK-820が開発された。そこで本研究ではさらに、メタンフェタミン慢性処置による精神依存の増強効果に対するTRK-820の影響を検討し、その臨床応用への可能性を探索した。その結果、TRK-820の処置によってもメタンフェタミン慢性処置による精神依存の増強は有意に抑制された。以上本研究の結果から、現在臨床において脳梗塞や脳出血後遺症に伴うめまいに使用され、それ自身依存性を示さないイフェンプロジルならびに新規κ受容体作動薬であるTRK-820が、覚せい剤依存症の治療薬として臨床応用できる可能性を見出した。一方、本年度購入した冷却型CCDカメラを用いて、メタンフェタミンを慢性処置した前脳辺縁部ではアストロサイトの著しい活性化が引き起こされることを免疫組織学的に明らかにした。来年度はこれらの知見を基にさらなる展開を行う予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H.Mizugichi, K-C.Hung, R.Leitermann, M.Narita, H.Nagase, T.Suzuki, L.F.Tseng: "Blockade of μ-opioid receptor-mediated G-protein activation and antinociception by TRK-820 in mice."Eur.J.Pharmacol.. 461. 35-39 (2003)
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[Publications] M.Narita, K.Aoki, M.Takagi, Y.Yajima, T.Suzuki: "Implication of brain-derived neurotrophic factor in the release of dopamine and dopamine-related behaviors induced by methamphetamine."Neuroscience. 119. 767-775 (2003)
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[Publications] M.Narita, M.Takagi, K.Aoki, N.Kuzumaki, T.Suzuki: "Implication of Rho-associated kinase in the methamphetamine-induced dopamine release and behaviors in rats."J.Neurochem.. 86. 273-282 (2003)
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[Publications] M.Narita, J.Khotib, H.Mizoguciu, M.Suzuki, S.Ozaki, Y.Yajima, L.F.Tseng, T.Suzuki: "Direct evidence for the up-regulation of spinal μ-opioid receptor function after repeated stimulation of κ-opioid receptors in the mouse."Eur.J.Neurosci.. 18. 2498-2504 (2003)
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[Publications] J.Khotib, M.Narita, M.Suzuki, Y.Yajima, T.Suzuki: "Functional interaction among opioid receptor types : up-regulation of μ- and δ-opioid receptor functions after repeated stimulation of κ-opioid receptors."Neuropharmacology. 46. 531-540 (2004)
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[Publications] M.Narita, M.Suzuki, M.Narita, Y.Yajima, R.Suzuki, S.Shioda, T.Suzuki: "Neuronal protein kinase Cγ-dependent proliferation/hypertrophy of spinal cord astrocyte following repeated in vivo administration of morphine."Eur.J.Neurosci.. 19. 479-484 (2004)
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[Publications] H.Mizoguchi, R.J.Leitermann, M.Narita, H.Nagase, T.Suzuki, L.F.Tseng: "Region-dependent G-protein activation by κ-opioid receptor agonists in the mouse brain."Neurosci.Lett.. 356. 145-147 (2004)