Research Abstract |
1.悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)のcDNA microarray分析:MPNST6例と良性末梢神経鞘腫瘍(BPNST)5例について,cDNA microarrayを用いて遺伝子発現プロファイルを比較検討したところ,MPNSTに発現増強の認められる分子として,survivin, tenascinCが検出された.両分子ともにRT-PCRにても,MPNSTにおける発現増強が認められ,蛋白レベルでも免疫組織化学的に発現亢進が確認された.SurvivinはMPNST腫瘍細胞に発現しており,TenascinCはMPNSTの間質,特に浸潤先端部間質に強く発現していた.これらの結果より,Survivin, tenascinCがMPNSTの増殖,浸潤に関係する可能性が示唆された(日本病理学会誌2005;94:278). 2.血管平滑筋腫のcomparative genomic hybridization (CGH)分析:本腫瘍の分子細胞遺伝学的な変化についてはほとんどわかっていない.我々は33例の血管平滑筋腫のホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織を用いて,相対的なDNAコピー数変化を確認するために,CGHを施行した.結果は,23例で得られ,それらの35%は1,2の染色体でDNAコピー数の変化を示した.最も頻度が高い欠失は,22番染色体に認められ,最小の共通領域は,5例で22q11.2であった.また再発する増加は,Xq(3例)で見られた.本研究は,少なくとも若干の血管平滑筋腫の発現に関係する遺伝子を含む可能性がある染色体領域を特定した(Int J Mol Med 2004;13:13-6). 3.脱分化脂肪肉腫の分子細胞遺伝学的分析:本腫瘍は高分化脂肪肉腫の中に低分化の非脂肪性肉腫成分が出現するものであるが,本態および細胞遺伝学的特性については不明の点が多い.我々は脱分化脂肪肉腫の培養細胞においてはじめてmulticolor FISH (mFISH)を施行した本腫瘍の染色体分析では複雑な核型と巨大マーカー染色体がみられ,mFISH分析で巨大マーカーは12番染色体の成分を含んでいることを明らかにした.
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