2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨・軟部腫瘍の細胞遺伝学的・分子病理学的特性とMMPの発現に関する研究
Project/Area Number |
15390119
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩崎 宏 福岡大学, 医学部, 教授 (90101170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍋島 一樹 福岡大学, 医学部, 助教授 (40189189)
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 肉腫 / Imatinib / siRNA / 細胞外マトリックス / MMP / MPNST / PDGFR |
Research Abstract |
本年度は悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor ; MPNST)の分子病理学的特性とくにPDGF-BB受容体発現と浸潤能について検討した。MPNSTは放射線療法や化学治療に抵抗性のため予後不良であり、現在のところ完全な外科的切除以外に、有効な治療法はない。本研究ではMPNSTの細胞株の基底膜浸潤が、PDGF-BBにより増強されることから、浸潤にかかわる重要な因子としてPDGFR-βを同定し、またそのチロシンキナーゼをImatinib mesilateで阻害することにより浸潤・増殖を抑制したことから、Imatinib mesilateがMPNSTの新たな治療薬としての応用の可能性を示唆した。 本研究の独創的な点は、細胞株として樹立されたものが極めて少ないMPNSTの細胞株を用いた実験であるという点、MPNSTの治療方法を検索する上で、増殖抑制効果ではなく、まず浸潤抑制に着目した点、そして、その手法として、これまでに、motogenic activityがあると報告された8つの増殖因子のプロファイルからPDGF-BBを同定し、その受容体発現を確認して、受容体の機能を阻害する薬剤を用いたという点で斬新である。 「MPNSTの浸潤に重要な役割を果たしているのが、PDGFR-βである」ことの同定に関しては、(1)PDGF-BBでのみ2つの細胞株の浸潤亢進がみられ、PDGF-AAでの浸潤亢進は見られない、(2)PDGFRのチロシンキナーゼ阻害剤で浸潤が抑制される、(3)PDGF-BB刺激によってPDGFR-βのチロシンリン酸化は生じるが、PDGFR-αのリン酸化は生じない、(4)PDGFR-βの発現をsiRNAにて特異的に抑制すると浸潤も抑制される、ことを確認した。また、「神経線維腫、シュワン細胞腫に比較し、MPNSTではPDGFR-βの発現が増強していた」ことの確認に際しては、(1)RT-PCR法を用いてmRNAレベル、(2)免疫染色を用いて蛋白レベルでの検索を行った。このように実験目的に対して適切で確立された複数の実験手技を用いて証明しており、十分な正確性があると考えられる。 本研究により、Imatinib mesilateの治療応用の可能性が示唆された。Imatinib mesilateは既に、慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍等に用いられ、臨床的に有用性が認められている薬剤である。MPNSTに対してのin vivoでの有効性が確認されれば、外科手術での治療困難例に対し、直ちに使用可能であるという点、治療法の殆どないMPNSTの新たな治療選択枝となる可能性がある。
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Research Products
(13 results)