2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト多段階発がんにおけるDNAメチルトランスフェラーゼの異常
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15390120
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
金井 弥栄 国立がんセンター(研究所), 病理部, 部長 (00260315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前島 亜希子 国立がんセンター(研究所), 病理部, 研究員 (90342906)
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Keywords | DNAメチル化 / DNMT1 / 傍セントロメアサテライト領域 / 染色体不安定性 / 膀胱がん / 移行上皮がん / 多段階発がん / 前がん段階 |
Research Abstract |
本年度は、膀胱がんの多段階発生過程におけるDNAメチル化の変化の意義の理解をすすめることを目的とした。正常移行上皮・尿中にある発がん物質等に暴露され前がん段階にある可能性がある膀胱がん症例より得られた組織学的に特記すべき所見を示さない非がん移行上皮・異形成上皮・移行上皮がんにおいて、DNMT1の蛋白発現を免疫組織化学的に検討した。さらに、複数のCpGアイランドにおけるDNAメチル化の状態をバイサルファイト変換によって、傍セントロメアサテライト領域のDNAメチル化の状態をサザン法によって、それぞれ評価した。 膀胱がん症例より得られた組織学的に特記すべき所見を示さない非がん移行上皮において、正常移行上皮に比し、細胞増殖活性の亢進に先行してDNMT1の蛋白発現が既に有意に亢進し、CpGアイランドにおけるDNAメチル化の蓄積が観察された。DNMT1の蛋白発現は、異形成上皮・移行上皮がんにおいてさらに段階的に亢進し、全検体においてDNMT1の蛋白発現亢進の有無とDNAメチル化の蓄積は有意に相関した。DNMT1の蛋白発現亢進は、多数のCpGアイランドにおけるDNAメチル化の亢進を介して、膀胱がんの多段階発生過程に早期から寄与する可能性があると考えられた。 傍セントロメアサテライト領域のDNAメチル化の減弱は、移行上皮がんの異型度・深達と有意に相関した。サテライト配列は傍セントロメアヘテロクロマチン領域に位置し、この領域のDNAメチル化の減弱はセントロメアのクロマチン脱凝縮や染色体組み換えを促進することが知られている。傍セントロメアサテライト領域におけるDNAメチル化の減弱と、サテライト配列が豊富である第9染色体におけるヘテロ接合性喪失の有無は有意に相関した。DNAメチル化の減弱は、染色体不安定性の惹起を介して、膀胱がんの発生に寄与する可能性があると考えられた。
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Research Products
(6 results)