2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリのエフェクタータンパク質の機能と胃粘膜感染機構の研究
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15390141
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / 胃 / 病原性 / CagA |
Research Abstract |
胃炎、胃潰瘍、胃MALTリンパ腫に関与するヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の病原性には、cag pathogenicity island (cag PAI)とよばれるピロリ菌の遺伝子群が重要である。Cag PAIにコードされているIV型分泌装置によって、菌体病原性因子が宿主細胞へ分泌・注入されて、胃粘膜の炎症が引き起こされることが提唱されている。この分泌装置を介して分泌される菌体因子として唯一同定されているCagAタンパク質は、上皮細胞の運動と増殖を促進することが報告されている。また、感染に伴い、ピロリ菌が胃上皮細胞死を調節することが病原性に重要であるとの報告も多く、これら多様な感染宿主生体反応におけるCagA分子の作用機序は病態の解明において重要である。 これまでの研究で、CagAは宿主細胞内でGrb2,SHP-2,Cskなどと結合して細胞運動能や増殖能を促進することが報告されており、CagAは様々なシグナル伝達分子を結合しうる多機能タンパク質であることが明らかになりつつある。今回新たにCagAの宿主内結合因子として、アダプタータンパク質Crkを同定した。ドミナントネガティブ体の過剰発現、もしくはsiRNAによるCrkのノックダウンの結果、CagAによって誘導される宿主細胞運動能亢進が抑制された。また、阻害剤等を用いた実験から、Crkによるシグナルカスケードの下流で活性化されるH-Ras,Rap1,Rac1の活性化がCagAに起因する宿主細胞応答に必要であることが示唆された。 また、胃上皮細胞のアポトーシスを解析した結果、ピロリ菌の感染に伴い注入されるCagAによって、アポトーシスが抑制されることが明らかになった。阻害剤やsiRNAを用いた実験の結果、CagAによる宿主MAPKの活性化が、アポトーシス抑制能に関与することが示唆された。 これらの結果から、ピロリ菌の胃粘膜長期定着を通じて、CagAタンパク質により引き起こされるシグナル伝達カスケードの亢進が、正常な胃粘膜におけるアポトーシスと細胞増殖のバランスを崩し、病態の発症と悪性化に寄与することが推察された。
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Research Products
(7 results)