2004 Fiscal Year Annual Research Report
伝染性膿痂疹を引き起こす黄色ブドウ球菌のゲノミクスおよびポストゲノミクス
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15390143
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
菅井 基行 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10201568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松澤 均 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (90253088)
藤原 環 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (90274092)
小原 勝 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (80253095)
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Keywords | Exfoliative toxin / MRSA / PFGE / mecA / ET |
Research Abstract |
本研究では日本全国26都道府県の約60の医療機関の協力のもとに、伝染性膿痂疹の患者患部をシースワブによって擦過して得た検体を採取し、当教室で約2000株のブドウ球菌を分離し、そのうち1017株の黄色ブトウ球菌を同定した。得られたブドウ球菌についてSmaI制限酵素を用いたパルスフィールド電気泳動、eta,etb,etaの各遺伝子に関するサザンハイブリダイゼーション、コアグラーゼ型別、SEA.SEB,SEC,SEDのイムノビーズを用いた凝集試験、eat,etb,etd,sea,seb,sec,sed,tsst-1,femA,mecAについてのPCRを行い、泳動パタンはスキャナーに取り込んでGel Comparソフトウェアを用いてクラスタリング解析を行った。また全菌株について伝染性膿痂疹に用いられる抗菌治療薬(セフェム系、マクロライド、フシジン酸、テトラサイクリン系、キノロン系)を用いた薬剤感受性試験を行った。その結果、伝染性膿痂疹を起こす黄色ブドウ球菌は5つの均一なゲノムタイプを示す集団(クラスター)に分類され、それぞれのクラスターと毒素産生性、コアグラーゼ型が一致した。すなわちETA産生株が3つのクラスター、ETB産生株、ETD産生株がそれぞれ1つのクラスターとして存在し、ETA産生株クラスターはコアグラーゼV,III,VII型であった。ETB産生株クラスターはコアグラーゼI型、ETD産生株クラスクーはコアグラーゼII型であった。またコアグラーゼIII型ETA産生株クラスターはほぼ100%がmecA遺伝子陽性,ETB産生株クラスターの約70%がmecA遺伝子陽性であった。各クラスターに属する代表株についてMultilocus Sequence Typingを行ったところ、それぞれのMLSTがクラスター内では同一であることから、これらの株は5つのゲノムタイプのクローンが感染を起こしていることが強く示唆された。全体として伝染性膿痂疹患者由来のET産生株の約30%がmecA遺伝子を保有しておりMRSAとして存在していることが明らかとなった。薬剤感受性試験の結果、これらのmecA陽性株はβ-ラクタム剤に対して耐性を示したが、耐性度は低く、ボーダーライン〜中等度耐性を示した。またフシジン酸、ミノサイクリンに対して全例で極めて良い感受性を示した。以上のことから日本で伝染性膿痂疹を起こす黄色ブドウ球菌の3割はMRSAであり、それらは大きく2つのクローンとして地域に広がっていることが示された。
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Research Products
(5 results)