2006 Fiscal Year Annual Research Report
bFGFとHGFの動脈硬化に関する作用と神経保護作用及び循環器疾患発症との関連
Project/Area Number |
15390203
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小西 正光 愛媛大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40274328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 克俊 愛媛大学, 総合健康センター, 助教授 (10314949)
渡部 和子 愛媛大学, 大学院医学系研究科, 助手 (70380219)
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Keywords | 脳卒中 / 循環器疾患 / 高血圧 / bFGF / HGF / 脳 / 神経 |
Research Abstract |
近年の基礎医学における脳虚血とその保護に関する研究から、1990年代に入り神経細胞が虚血ストレスに対して適応現象を示すこと(虚血耐性現象)、及び虚血侵襲に対して神経細胞新生が亢進すること(神経細胞新生の亢進)が明らかとなってきた。本疫学研究では、この神経細胞新生の亢進に関与する物質の一つとして挙げられている神経栄養因子・成長因子であるbFGF(basic Fibroblast Growth Factor:塩基性線維芽細胞成長因子)、HGF(Hepatocyte growth factor:肝細胞成長因子)について着目し、これらの指標の有用について、地域住民コホート集団を用いて検討を行った。 本研究では、1996年から調査を実施しているE県A市の地域集団(男女計4,475人:30歳以上)を対象に2004年末まで追跡調査を実施し、WHO/MONICAの診断基準に即して脳卒中96例、急性心筋梗塞12例の発症を認めた。 このデータを用い、nested-case control studyの手法を用いて、case群に対して、性・年齢をマッチさせたcontrol群を1:3の割合で抽出し、ベースライン調査時に保存した凍結血清を用いてbFGF及びHGFの測定を行った。 喫煙状況を調整した重回帰分析の結果、脳卒中を発症した者のベースライン時のbFGF値は8.96±0.93pg/mL(mean±SE)と非発症者の10.28±0.56pg/mLと比べて低い傾向を示した。HGFも脳卒中発症者では0.36±0.02ng/mLと非発症者の0.39±0.01ng/mLと比べて有意に低い値を示した(p<0.05)。さらにHGFについては、BMI、高血圧、高脂血症、耐糖能異常の調整後も有意に低い値であった。 これらから、特にHGFについては、既知の危険因子とは独立した因子であることが明らかとなり、またそのメカニズムとしては、神経栄養因子の低下が虚血耐性の抑制を示すことがin vivoでも明らかとなった。本研究結果から、簡便な血液検査により直接的に脳の虚血状態の評価が可能と考えられ、新たな脳卒中予防対策の推進につながると考えられる。
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