2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15390218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福土 審 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80199249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 光之 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (20172265)
青木 正志 東北大学, 病院・助手 (70302148)
鹿野 理子 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (20344658)
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Keywords | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / CRH / 消化管運動 / 消化管知覚 / PET / CRH-R1 / α-helical CRH |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、前年度にひき続き、消化管刺激により脳腸の特定部位で神経伝達物質、特にストレスの鍵物質であるcorticotropin-releasing hormone (CRH)が放出され、中枢機能ならびに消化管機能を変化させるという仮説を検証し、脳腸相関の物質的基盤を解明することである。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome : IBS)では中枢神経と消化管のストレス反応性が亢進している。IBS患者は不安・覚醒水準が高く、脳波パワースペクトラ異常を呈する(Scand J Gastroenterol 34:478-484,1999)。この現象は脳内corticotropin-releasing hormone(CRH)の機能亢進によって説明できる。そこで、CRH拮抗薬の投与がIBSの脳波パワースペクトラ異常を改善するという仮説を検証した。対象はRome II基準で診断されたIBS10名、健常対照者10名である。大腸内視鏡を用い、下行結腸にバッグを挿入し、安静状態と大腸伸展刺激状態のバロスタット検査を施行した。同時に国際10-20法で頭皮に装着した電極を増幅して脳波を導出した。最初に生理食塩水を点滴し、次いでCRH拮抗薬のα-helical CRH 10 μg/Kgを点滴し、両群の反応差を比較した。脳波信号はシグナルプロセッサで高速フーリエ変換し、脳波パワースペクトラを分析した。IBSでは安静時の脳波αパワー(16.3+/-3.1%,Fp2)が有意に対照(32.5+/-3.9%)よりも低値であった(p<0.05)。IBSでは安静時の脳波βパワーが有意に対照よりも高値であった(p<0.05)。大腸伸展刺激により、両群において脳波αパワーが有意に減衰するとともに(p<0.05)、脳波βパワーは有意に増加し(p<0.05)、両群の差は消失した。α-helical CRH投与により、安静時の脳波パワースペクトラの有意差は消失し、かつ、大腸伸展刺激による脳波パワースペクトラの変化も減弱した。CRH拮抗薬の投与により、IBSの脳波パワースペクトラ異常が改善し、消化管刺激による中枢神経の反応が減弱した。次に健常者とIBSの下行結腸に大腸伸展刺激を加え、サイクロトロンで合成した核種H_2^<15>O生理食塩水を経静脈的に投与し、positron emission tomography (PET)を行った。大腸伸展刺激により、視床、前帯状回、前頭前野の局所脳血流量増加が認められ、IBSで腹痛と不安がより誘発された。以上より、IBSにおける脳内CRH系の機能亢進とともに、IBSに対するCRH拮抗薬の治療薬としての可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)