2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15390218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福土 審 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80199249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 正志 東北大学, 病院・助手 (70302148)
金澤 素 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70323003)
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Keywords | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / CRH / 消化管運動 / 消化管知覚 / PET / CRH-R1 / α-helical CRH |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、前年度にひき続き、消化管刺激により脳腸の特定部位で神経伝達物質、特にストレスの鍵物質であるcorticotropin-releasing hormone(CRH)が放出され、中枢機能ならびに消化管機能を変化させるという仮説を検証し、脳腸相関の物質的基盤を解明することである。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome : IBS)では中枢神経と消化管のストレス反応性が亢進している。IBS患者は不安・覚醒水準が高く、corticotropin-releasing hormone(CRH)の外因性投与により、adrenocorticotropic hormone(ACTH)放出と大腸運動亢進が生ずる(Gut 42:845-849,1998)。この現象は脳内CRHの機能亢進によって説明できる。そこで、CRH拮抗薬の投与がIBSの動物モデルの病態を改善するという仮説を検証した。対象はWistar系雄性ラット(n=73)である。CRH-R1受容体拮抗薬JTC017を主に用いた。まず、JTC017のCRH-R1受容体結合の特異性を検証した。次に脳固定手術を行い、microdialysis probeを海馬に留置し、回復の後、Ringer液を2μl/minで灌流してmicrodialysisを行った。次いで、ポリエチレン製のバロスッタトバッグをラット用に作成し、80mmHgの圧力を20分間負荷し、大腸伸展刺激を加えた。この時の腹壁の収縮回数をvisceromotor response(VMR)として計測した。同時に高速液体chromatographyにて海馬noradrenaline放出を測定した。実験後にACTHならびにcorticosteroneを測定した。これらをJTC017存在下とvehicle投与の両方で比較した。JTC017のCRH-R1受容体結合の特異性は高く、R2受容体には結合しなかった。しかし、affinityはα-helical CRHの方が高かった。vehicle投与時は、大腸伸展刺激により、海馬noradrenaline放出が407±112%へ、ACTHが427±41pg/mlへと有意に増加したのに対し、JTC017投与時はこれらがそれぞれ130±17%、313±33pg/mlと有意に抑制された。VMRならびに慢性大腸伸展刺激後の新奇環境に曝露した時の大腸運動においてもJTC017の投与がIBS様の病態を抑制した。ヒト脳画像においても、α-helical CRHの効果を示す端緒が得られた。以上より、IBSにおける脳内CRH系の機能亢進とともに、IBSに対するCRH拮抗薬の治療薬としての可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)