2005 Fiscal Year Annual Research Report
ドミナント・ネガティブタイプのHIF-1を用いた膵癌の分子標的療法の開発
Project/Area Number |
15390222
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小林 隆彦 北海道大学, 病院, 講師 (80333607)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正伸 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (80241321)
|
Keywords | 膵癌 / HIF-1 / 低酸素 |
Research Abstract |
これまでに、膵癌細胞では低酸素適応を制御する転写因子であるhypoxia inducible factor-1(HIF-1)が他の固形癌とは異なり恒常的に発現していることを明らかにし、膵癌細胞の転移能やアポトーシス抵抗性に関与していることを報告してきた。 膵癌におけるHIF-1の機能抑制を目指し、ドミナントネガティブ・タイプのHIF-1(DN HIF-1)を作成し、それを膵癌細胞に導入することによって細胞増殖能を低下させることを試みる。また、HIF-1により誘導されるアポトーシス抵抗性、低酸素や低栄養によって誘導されるアポトーシスに対する膵癌細胞の感受性が回復することをin vitro、in vivoにて証明する。さらにDN HIF-1を用いた膵癌の分子標的療法の可能性を検討する。 TAT融合蛋白は標的蛋白質そのものを、ほぼ100%の効率で直接癌細胞に誘導しうる新しい技術であり、マウスにおいて、TAT融合蛋白は静脈内投与、腹腔内投与を問わず、全身に分布することが報告されている。この技術を応用し、DN HIF-1のTAT融合蛋白を利用した新しい膵癌治療法の可能性を検討する。 そこでまずTAT融合DN HIF-1の発現ベクターを作成し、これを大腸菌で発現させてTAT/DN HIF-1融合蛋白の大量精製法を確立させることを目指した。当初、通常のT7プロモーターを用いた大腸菌発現ベクターを構築したが、十分な収量が得られなかった。そこで、次にコールド・ショック遺伝子のプロモーターの有用性を検討した。具体的にはcspA遺伝子のプロモーターを用いて、低温下で大腸菌を培養した。TAT/DN HIF-1融合蛋白の収量は増加したが十分とは言えず、また大部分が不溶画化し、精製に困難をきたした。そこで、大腸菌にTAT/DN HIF-1融合蛋白と同時に、シャペロンtigを共発現させ、可溶化の向上を試みた。これらにより、TAT/DN HIF-1融合蛋白の収量は増加したが、in vivoに投与検討できるほどには至らず、さらなる改善が必要である。また現在TAT融合蛋白以外の誘導法を検討している。 また、腫瘍細胞が宿主の免疫機構の監視を逃れるメカニズムを検討するために、低酸素下での樹状細胞の機能を検討した。低酸素下では、樹状細胞の遊走に必要な細胞外基質分解に働くMMPの発現が低下しており、このことが、樹状細胞の免疫担当細胞としての機能低下に関与していることを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)