Research Abstract |
1)前年度からの継続で,肝細胞癌(McA-RH7777)移植ラットの肝癌組織において,コレステロール(CHOL)合成のフィードバックがかからず,際限のないコレステロールの供給が行われている原因を検討した。通常CHOL合成系を促進させる転写因子(SREBP2)の活性は,27-OH-CHOL,25-OH-CHOLなどの酸化ステロールによって抑制され,それがCHOL合成フィードバック機構の本質であると考えられている。癌組織中にはこれらの酸化ステロールが著明に増加していたが,SREBP2の発現も増加しているため,フィードバック自体のセットポイントが上昇し,CHOLが供給過剰になっているものと考えられた(投稿中)。 2)血中および組織中のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)関連ステロイド(DHEA,7αOH-DHEA,7βOH-DHEA,7oxo-DHEA)を高分解能GC/MS/SIMを用いて定量する新しい方法を開発した。本法は重水素で標識されたDHEA関連ステロイドを内部標準として用いる同位体希釈法による手法である。従来のイムノアッセイと比較して,高い信頼性の下で高感度測定が可能となった(Steroids,2004)。 3)DHEAの抗腫瘍作用のメカニズムを明らかにするために,肝癌細胞株(HepG2)を用いて基礎的検討を行った。その結果,DHEAはAktのリン酸化を阻害することによってPI3K/Akt signaling pathwayを抑制し,アポトーシスを誘導する可能性が示唆された。さらに,アポトーシスの誘導とは別に,DHEAはG0/G1 phaseで,cell cycleを停止させる作用があることが明らかになった(J Gastroenterol, in press)。
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