Research Abstract |
パーキン遺伝子の変異解析は総計1000例に及ぶ大型研究になった.劣性遺伝形式で若年発症では約50%に頻度が及ぶことが分かった.更に海外でも報告されているヘテロ接合体でも発症することが確認され,ホモ接合体と比較すると発症年齢が高齢化する傾向を認めた.欠失のbreak pointも明らかにでき,特にエクソン1の欠失範囲がhead-to-headで遺伝子が向かい合わせに存在しているGlup遺伝子を含むことが判明した.従来エクソン1の欠失の報告は存在したが,隣接している遺伝子を含むか否かは不明であった.今回検討でそのことが明らかにされ,Glup遺伝子を含んでも表現型に相違はないことが確認された.一方,パーキン遺伝子変異陰性例が約50%存在するが,連鎖解析より我が国にもPARK6,PARK7に連鎖する可能性の高い家系が存在することが明らかにされた.その結果,海外グループに先を越されたが,最初に報告されたグループとは独立してPARK6の原因遺伝子PINK1を同定できた.パーキン遺伝子変異に次いで頻度が高いことが明らかにされ,その頻度は約7%であることが分かった.PARK7については現在のところ変異例は存在せず,海外データも1%と低く,我が国でも稀であることが推定された.これら研究成果は論文として既に報告している.パーキン蛋白の機能解析については基質候補について検討し,その一つであるPDCD-2,LMO4について解析をした.特にPDCD-2は,ヒト変異陽性例の剖検脳で蓄積を認めた.興味あることに,この蓄積は孤発型パーキンソン病でも認めた.孤発型パーキンソン病で認めたことに関しては,パーキン蛋白が変性の過程でニトロ化を受け,二次的に酵素活性を低下させたことが推定された.従来通り,基質候補の検討だけでは,真のパーキン蛋白の神経変性への関与は明らかにすることは困難を極めることが予想されたため,In vitro系でパーキン遺伝子の発現をノックダウンさせることで機能解析を行い,ドーパ・ドパミンキノンがパーキン遺伝子のノックダウン後に増加し,その増加と並行して細胞死が誘導されることが明らかにされた.更に正常α-シヌクレインをパーキンがノックダウンされた細胞系に発現させると,誘導された細胞死が抑制された.家族性パーキンソン病の遺伝子群が共通機序を形成していることが分かった.
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