2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15390288
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下村 伊一郎 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (60346145)
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Keywords | アディポサイトカイン / 内臓脂肪型肥満 |
Research Abstract |
1.栄養により調節される新たなアディポサイトカインの同定:生活習慣病の病態に関連する因子となるような新たなアディポサイトカインを同定するために、絶食マウス、絶食後の再摂食マウス、過食を呈する肥満マウスの脂肪組織を試料として、signal sequence trap(SST)法を用いて内分泌因子を網羅的にスクリーニングを行った。今後は得られたcDNAクローンの組織分布や栄養調節による発現制御を解明していく予定である。 2.内臓脂肪型肥満と関連する新たなアディポサイトカイン・ビスファチンの生理病態的意義 私共はDifferential Display法を用いて、皮下脂肪に比し内臓脂肪で約10倍多く発現する遺伝子としてビスファチン(Visfatin : Visceral fat-derived factor)を同定した。ビスファチンの発現ベクターを作成してCOS-1細胞にトランスフェクションしたところ、培養液中への分泌が確認され、ビスファチンが分泌因子であることが明らかになった。また培養前駆脂肪細胞を分化誘導させると、脂肪細胞への分化に伴って、ビスファチンのmRNA発現量が増加し、培養液中へのビスファチン分泌が増加することを明らかにした。さらに、前駆脂肪細胞にリコンビナント-ビスファチンを添加することで、脂肪細胞への分化が誘導され、ビスファチンが脂肪細胞への分化誘導因子であることを明らかにした。生体においてもコントロールマウスに対して、肥満マウスでは、内臓脂肪におけるビスファチン発現が増加していた。しかし、褐色脂肪組織や皮下脂肪においてはビスファチンの発現は増加しなかった。以上のことからビスファチンは内臓脂肪型肥満に関連する新たなアディポサイトカインであり、内臓脂肪蓄積を促進する因子である可能性が示唆された。今後はビスファチンの脂肪細胞分化に関わるメカニズムや、マウス生体への投与による効果を解明していく予定である。
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