2003 Fiscal Year Annual Research Report
注意欠陥/多動性障害(ADHD)における神経ステロイドの役割に関する研究
Project/Area Number |
15390345
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
富樫 広子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20113590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 一郎 北海道大学, 医学部・歯学部付属病院, 講師 (40260393)
吉岡 充弘 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40182729)
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Keywords | 注意欠陥 / 多動性障害 / 軽度発達障害 / ADHDモデルラット / 神経ステロイド / エストロゲン受容体 / 血管増殖因子 |
Research Abstract |
注意欠陥/多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder ; ADHD)は、主に幼児期から学齢期の児童に認められる、不注意、多動性および衝動性を中核症状とし、時に認知機能障害を伴う、軽度発達障害と位置づけられる精神疾患である。本疾患は学齢期の子供達の3-5%において認められ、女児に比し男児に多く発現するという特徴を有する。このような現実を踏まえ、本研究は、ADHDに類似した行動学的特性を有するモデルラット、幼若SHRSPを用いて、男児優勢における神経ステロイドの機能的役割を追究することを目的とした。すなわち、ADHDモデルラットに雄優勢に認められるの行動学的特性(不注意を背景とする短期記憶障害)におよぼす睾丸摘出の影響およびホルモン補充の効果を、行動学的ならびに免疫組織学的に検討した。その結果、SHRSPにおける不注意を背景とする短期記憶障害は、生後3週齢時の去勢によって改善し、アルドステロン補充によって改善効果が消失することが明らかとなった。さらに、ADHD患者において脳血流低下等の機能不全が報告されている大脳皮質前頭葉について、関連分子を免疫組織学的に検討した結果、SHRSPの大脳皮質前頭前野では、エストロゲン受容体(Eα)および血管増殖因子とその受容体(VEGF、KDR)の発現が遺伝的対照ラットに比較して低下していること、これら免疫組織化学変化は行動学的変化に関連していることを見出した。これらの事実は、エストロゲン受容体蛋白発現低下に起因する脳血管構築不全が、ADHDにおける性差の神経科学的基盤として存在し、ADHDにおける脳血流低下や認知機能障害に関わっている可能性を示すものである。これらの成果は、米国神経科学会年会およびいくつかの国内外学会にて報告し、現在、英文論文として投稿ならびに投稿準備中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ken-ichi Ueno: "Juvenile stroke-prone spontaneously hypertensive rats as an animal model of attention-deficit/hyperactivity disorder"Biogenic Amines. 17,(4-6). 293-312 (2003)
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[Publications] 富樫 広子: "注意欠陥/多動性障害症候モデルとしてのSHRSP/Ezo"SHR News Letter. No.14. 1-2 (2003)
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[Publications] Hiroko Togashi: "Anxiety-related behavior in juvenile stroke-prone spontaneously hypertensive rats, an animal model of attention-deficit/hyperactivity disorder"Biogenic Amines. (in press). (2004)