Research Abstract |
ヒト単核球および多核球内におけるhPer1,hPer2,hPer3,Clock, BMAL1,Timeless, Cry1,Cry2,Dec1,Dec2の10種類の時計遺伝子群,及び,内部標準補正用のβ-actinの発現定量解析を進めた.測定には特異的ハイブリプロープを用いたReal Time PCR法を用い,遺伝子ごとに内標用プラスミドを作成し発現定量解析を行った.健常若年成人,健常高齢者,視交叉上核障害モデルであるアルツハイマー病患者,内的脱同調モデルである非24時間睡眠・覚醒症候群罹患者を対象として,修正型コンスタントルーチン法を用いて上記の時計遺伝子転写リズム特性を評価した.解析には12/24-h compositeもしくはsingle cosine modelを適宜用いた.各リズム位相はメラトニンリズム位相に対する相対時刻で表した. ヒト単核球においても上記の時計遺伝子ループを構成する主要遺伝子群すべての転写発現が認められた.hPer1,hPer2,hPer3,Cry1,Cry2,Dec1,Dec2では明期の前半期に転写リズム頂点位相が集中していた.一方,Clock, BMAL1転写には有意な慨日変動は認められなかった.これらの位相特徴は齧歯類視交叉上核細胞や末梢細胞でのデータと近似していた.各リズムの平均位相(若年vs高齢;位相角差)は,深部体温(+15h58m vs +16h16;Δ-0h18m),コルチゾール分泌(+5h46m vs +4h38m;Δ-1h08min).有意なhPer転写リズムを示した被験者数は,hPer1(8/8 vs 4/6),hPer2(6/8 vs 4/6),hPer3(7/8 vs 4/6)であり,各平均位相はhPer1(+4h11m vs +3h33m;Δ-0h38m),hPer2(+2h42m vs +2h07m;Δ-0h35min),hPer3(+2h57m vs +3h10m;Δ+0h13min)であった.位相角差及び振幅に有意な年代間差を認めなかった.今回対象となった60代健常被験者では生理機能リズム及びSCNからの直接的な神経投射を受けない末梢循環単核球におけるhPer転写リズムの位相同調は若年群と同程度に保持されていた. 非24時間睡眠・覚醒症候群患者において観察された各リズムのフリーラン周期は,睡眠・覚醒(25.7h),コルチゾール分泌(25.7h),深部体温(25.9h),メラトニン分泌(25.0h),hPer1,2,3(25.7h)であった.すなわち,フリーラン経過中にメラトニン分泌,深部体温,及びその他のリズムとの間に内的脱同調が生じていた.hPer群の転写リズムは睡眠覚醒及びコルチゾール分泌リズムと同一周期を示した.今回の知見は,視交叉上核と末梢時計との間に多様な同調及び脱同調様式が存在する可能性を示唆している.
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