2004 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔覚醒メカニズムの新側面-脳覚醒伝達物質オレキシンの麻酔拮抗作用を探る-
Project/Area Number |
15390472
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
福田 悟 福井大学, 医学部, 教授 (30116751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨士原 秀善 福井大学, 医学部, 助教授 (20251803)
鈴木 久人 福井大学, 医学部, 助手 (90235987)
安田 善一 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (50252002)
樋口 隆 福井大学, 医学部, 教授 (70106326)
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Keywords | オレキシン / グルタミン酸 / 視床下部 / 脳波 / サポリン / コリン作動性神経系 / 前脳基底核 / pedunculopontine tegmentum nucleus |
Research Abstract |
前年度では、外因性投与オレキシン-Aはイソフルレン麻酔(1MAC:1.2%)に拮抗し、脳波を活性化することを報告した。本年度は、まず、内因性オレキシンがイソフルレンにどの様に作用するかを検討した。オレキシン細胞は脳内視床下部外側から後側部にかけて存在することが知られている。そこで、250〜300gのWistarラットを用い、視床下部外側部および後側部に脳内活性化物質であるグルタミン酸(20mg/ml:0.1μl)を微量投与した。視床下部外側部にグルタミン酸を投与しても、脳波は活性化されなかったが、視床下部後側部に投与すると、脳波はburst & suppressionから活性化脳波に変化した。この事実は、オレキシン細胞の覚醒維持作用は視床下部後側部位に存在し、オレキシン細胞には異所性にその作用が異なることが示唆された。また、このグルタミン酸刺激がオレキシン細胞を刺激しているのかどうかを検討するために、オレキシンとサポリン(細胞内に入りリボゾームを破壊する)結合体を、実験10日前に視床下部後側部に投与し、再び同量のグルタミン酸を投与した。この結合体はオレキシン細胞と選択的に結合し、細胞を破壊する。しかし、この場合には脳波は活性化されず、グルタミン酸刺激は選択的に視床下部後側部にあるオレキシン細胞を刺激することが判明した。次に、イソフルレン麻酔は脳血液関門を通過するフィゾスチグミンなどのアセチルコリン(Ach)エステラーゼ阻害薬により、拮抗されることが報告されている。すなわち脳内cholinergic arousal systemがイソフルレン麻酔と関連あることが予想されている。脳内cholinergic arousal systemは脳幹に存在するpedunculopontine tegmentum nucleus(PPTg)から、一部は視床を介して、一部は前脳基底核を介して大脳皮質に投射している。しかし、大脳皮質でのAchの放出に主として関与するのは、前脳基底核を関与する経路であるといわれている。このことから、前脳基底核にオレキシンAとBを投与したところ、脳波が活性化されると共に大脳皮質にあらかじめ投与しておいた、マイクロダイアリシスプローベからのAchの放出増大がみられた。また、その活性はオレキシンAの方がBより強かった。このことから、イソフルレン麻酔はcholinergic arousal systemと密接な関連があることが示唆された。
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